冬の晴れた日が好きだ。
外は寒いけど、低い位置から部屋の中を照らす陽の暖かさは堪んねえ。寒いよりあったかい方がいいに決まってるし。夏の焦げるような陽射しも嫌いじゃない。でも冬の太陽の柔らかさは心地良くって好きだ。体育館の窓から射し込む光を追っかけては浴びているオレに真ちゃんはよく呆れてる。猫みたいなのだよ、なーんて。
そんな暖かさと喉の渇きで意識が浮上した。冬は日の出が遅いのに瞼越しに感じる景色は明るくて、もういい時間じゃねえのなんて一瞬頭の中がパニックになる。でも、そういや今日は土曜だし部活も入試絡みの何かと重なってオフだし、って思い直して伸びをひとつ。掌に滑らかな感触があったのはその時だった。
目を開ける。ぱちり、ベッドの隣でこっちを見てる子と視線が絡まる。寝呆けた思考がはっきりしてきた。そうだオレ、彼女の家に泊まりに来てたんだったわ。

「なーに」
「…おはよ」

掌で触れた二の腕を撫で上げる。彼女はうつ伏せの姿勢で腕の上に顎を乗せてオレを見つめていた。光を遮るタイプじゃないカーテンから透ける陽に彼女の瞳が琥珀に輝く。オレが起きたからか、微睡んでた彼女の目がきゅうっと細まった。親いないからって顔を真っ赤にしてオレに言った昨日のことを思い出す。照れてる表情ってなんでこんなに可愛いんだろ。
顔を伏せようとする彼女を逆にじっと見つめ返して聞く。多分オレよりも前に目が覚めてたんだろう。「オレの寝顔に見惚れてたってわけ?」。途端、朝焼けを浴びてるみたいに染まった彼女の頬。オレの視界がさっきよりも眩しくなったのは、気のせいってやつかもしれないけど。

「…あのなー」
「だって…」
「そーいうことしちゃう子には、お仕置き」

彼女の口がえ、って動くのを見てからオレは素早く起き上がった。うつ伏せのまんまの背中にのし掛かって何も着てない肌に新しいキスマークをつけようとする。でも彼女も負けちゃいなかった。小さく悲鳴を上げてから狭いシングルベッドをごろごろ転がってオレを振り落とす。それを追って組み敷こうとすれば器用にすり抜けられた。音を立てて跳ねるスプリングの上、ベッドの隅に寄った彼女の腰に腕を回して、

「はい捕まえたー」
「もう、和成」

やっとぎゅって後ろから抱き締めれば嬉しそうに笑う彼女。お互いじゃれ合いだってことはわかってる。布団が落ちそうになってんのを戻して、指先で彼女の細い喉を擽った。その奥から伝わってきた震えに思う。猫みたい、なーんて。
もう一回、ってわざと低い声で囁くオレを彼女が振り返った。顔を覗き込んで尖らせた唇に吸い付けば恥ずかしそうに身体を捩らせる。優しい光がオレの周りには沢山ある。陽射しを浴びながら好きな子とただひたすらこんな風に過ごす日、幸せすぎてこのまま溶けちゃうかもしれない。
彼女の上半身がオレの方を向き、首筋にあったかい腕が伸びてきたのはそれからすぐのことだった。

20130110/海辺より黄昏さまへ提出

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