畑仕事、汚れるから嫌なんだけど。俺が唇を尖らせても主は動じない。「そう?美味しいお野菜食べたら肌が綺麗になるよ?すりすりしたくなるよ?それに」「ああもうわかったよ行けばいいんでしょ!!」行ってらっしゃいと主が手を振る。その指が頬をつつく場面を想像するだけで幸せな俺は、案外単純で。
- 加州清光

やっと鍛刀できたと大将が涙ぐむ。失敗続きだったのが何故成功したのか。呆れた顔をする歌仙の旦那以外に他の刀の気配はない。「わかんない、でも、薬研には愛情たっぷり込めた、」詰まり気味の声に、覚えたての呼吸が止まりそうになった。目を赤くした彼女に生涯尽くそうと決めたのは、きっとこの時だ。
- 薬研藤四郎

「君は本当に可愛いね」口にしたことは偽りのない事実であると同時に、どこまでも甘やかしたい下心も含まれている。主は自らのことでは滅多に感情を動かさない。「光忠は本当にかっこいいね」格好よく決めたいなんて、自分で言うのと彼女に言われるのでは訳が違う。つい逸らした左眼に、主が笑った。
- 燭台切光忠

蒼の狩衣が翻る。袴に覆われた脚を高く上げ、放物線を描く今剣と主。おなごがはしたないと歌仙は思うが、薬研は蹴鞠は楽しそうだなと笑う。「にーじゅきゅっ、さーんじゅー!!」どうやったら小天狗のように彼女を笑顔に出来るのか、縁側で巡る考えを他所に、目標を達成した二人が歓声を上げ抱き合う。
- 歌仙兼定、今剣、薬研藤四郎

白衣に襷を掛け掃除をしていると、金の髪が近付いて来た。「獅子王?」視線は露わになった二の腕から離れない。「いや、なんつーか…やわっこそーだな…って」老翁の記憶がほとんどの彼に、私は新鮮に映るのだろう。触ってもいいかと震える声。影が落ちる。私はこの刀にどこまで女を教えてしまうのか。
- 獅子王

僕の方が後に来た事実は変えられない。「あ、前ちゃん。お団子食べる?」万屋帰りの主君が続ける。平野もどう。魚の小骨程度の些細なことだ、けれど。主君が僕をしげしげと見て首を傾げた。「ひらちゃん、ひらりん、ひらひら…うーん」悩み始めた主君を前に、僕達は何とも言えない顔をしているだろう。
- 平野藤四郎、前田藤四郎

家事をこなす爽やかな脇差だったのに、和泉守が来た途端甘やかし構い倒すようになってしまった。「前の堀川くんがよかったよう、今でれっでれじゃん」「知らねーよ俺に言うな」堀川くんの話ばかりする私に嫌な顔を見せた後、和泉守がわかった、とにやり笑った。「嫉妬か」「えっ」「えっ」誰が、誰に。
- 和泉守兼定、堀川国広

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