冬の屋上。冷たい空気をひたすら浴びる。「寒い」とぽつり呟く彼女。隣に座る彼。

「…」無言で擦り寄る渚に彼女は驚く。「…何」「だって寒いんでしょう?こうすればほら、ちょっとはあったかいよ」すりすりすり。首をこてんと倒して頭を押し付けてくる渚はまるで猫のよう。そのうち腕を抱え込むようにして絡められ、「ちょ…あの、離れて、」「離れたら寒いもん」恥ずかしがる彼女の体温がほんの少し上がったことなら、とっくに知ってる。
葉月渚の場合

行くぞ、と手首を持ち上げられた。例え寒くても2人きりでいるだけで心地よかったのに、喧騒の中に戻ることに彼女は憂鬱になる。屋上の扉を開けて薄暗い校舎へ。「ん」「…ん?」階段の途中で足が止まった。端に座らされ、ひとつ上の段に遥が腰かける。後ろから彼女を抱きしめ目を閉じる遥。扉のガラスから漏れる光。ひたすら静かだが、その心地よさについ微睡む。
七瀬遥の場合

「そう言うと思ってた」フリースのブランケットが彼女の膝を覆う。真琴の優しさは時々申し訳なくなるレベルだ。穏やかな笑みを浮かべている真琴に、彼女がしてあげられることは。ブランケットの角を摘む。「…真琴も、入れば」「そう言うと思ってた」
橘真琴の場合・その1

それは、ここにいると寒いからもう教室に戻ろうという提案なのか。それとも、もう少し傍に寄ってという誘いなのか。美しい横顔からは本意が読み取れない。どうしても解の出せない命題。容易く彼女に触れられる位置にある手は、眼鏡に伸びていて。「…そうですね」中庸の返事が冬の陽気に消える。
竜ヶ崎怜の場合

真琴は大体優しいけど、ほんのたまに意地悪になる。「じゃあどうしたら暖かくなるかな?」「…教室、戻る?」「さっき来たばかりなのに?」彼女が横目で睨んでも真琴は気にする様子もない。溜息ひとつ、真琴の脚の間に移動して向き合うように座る彼女。ぎゅうっと抱きつけば真琴も彼女の背中に手を回す。「よくできました」真琴はほんのたまに意地悪だけど、こういう時は底抜けに彼女を甘やかす。
橘真琴の場合・その2

思い浮かばなくてごめんなさい凛ちゃん

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テーマ「人外ファンタジー」
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