バレバレ










「…名前先輩となんかあったんすか」
「なっ!!」




いつにも増してそわそわしている謙也さんを見つめてそう問いかける。
大声をあげたかと思えば、何でわかったん、と照れ臭そうな顔をして聞かれるもんだから、思いっきり顔を顰めてしまった。

部活中もサーブミスばっかして、部活が終われば挙動不審。わからん方がおかしい。ほんまに脳味噌つまってるんかな、この人。




「バレバレすぎてきしょいっすわ」
「お前…それ俺に言いすぎちゃうん」
「きしょいもんはきしょ…」
「やめろや!傷つくねん!!」



へー傷つくんや。意外、と呟いたら左から視線を感じる。謙也さんが睨んでもあんま怖ないっすね。





「で?」
「え?」
「…最初に聞いたの、もう忘れたんすか」
「あー、えーと……あのな、い、一緒に、寝たんやけど…」





思わず目を丸くしてしまう。肩にかけたスポーツバッグがずり落ちた気がして、慌てて無表情を取り繕った。
…どヘタレな謙也さんが、寝た。この人にそんな度胸あったんか。あー、名前先輩が頑張ったんやろか。


へえ、と返して部室から出る。寝たっちゅうことは、これで面倒な相談とか聞かんですむな。
後ろからついてきた謙也さんは部室の鍵を閉めると、真っ赤な顔で俺の肩を掴んだ。





「俺、朝にようわからん状態で抱いてしもたんやけど…あ、あかんか?」
「…え、謙也さんからヤったん?」
「……名前が可愛い顔しとったから、つい…」




俯いてぼそぼそと呟き始めるのを見て、ブログのネタになるなぁと考える。
ヘタレがついに攻めたんか…胸熱やな。部長にも教えとこ。

職員室に向かう先生を見つけて鍵を渡している謙也さんを見ながら、携帯を開く。
宛先を部長に設定してから、件名を考える。んー、まぁ件名は無くてもええか。





「ついに童貞卒業やないすか。良かったっすね」
「どっ…!!!は、はぁ!?」
「え、だってヤったんでしょ?セッ「ししししてへん!!」……あ?」




首飛ぶんちゃうか、と言う勢いで謙也さんは首を横に振った。
ヤってないってどういうことやねん。寝たとか抱いたとか言っといてそれは………あー、もしかして、もしかすると。





「ただ一緒に寝た後、朝に寝惚けて名前先輩のこと抱き締めたっちゅうことすか」






謙也さんが、今度は首を縦に振る。







「…ヘタレすぎて何も言えんわ…」
「えっ」



名前先輩も不憫やな。…いや、このレベルだと抱き締められただけで舞い上がってそうや。
深い溜息をつき、携帯の電源ボタンを何度か押して、新規メールを破棄した。






 




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