鈍感ボーイ





「今日、告白することにした」
「……は?」





至極真面目な顔でそう呟くと、白石は相当面食らったようで、箸で摘んでいたお弁当のおかずを落とした。
あ、おいしそうだったのに。
アスパラのベーコン巻きは地面に叩きつけられた衝撃で、ばらばらになっている。おかずの投身自殺みたい、なんて。





「黄緑とピンクってかわいい組み合わせだよね」
「ちょっと待っ、……名前、なに言ってるん」
「え?だから、黄緑とピンクが…」







ちゃう、と短く返されて押し黙る。
さっきまで見開かれていた白石の瞳は、既に冷静さを取り戻していた。
まっすぐ見据えられると、正直居心地が悪い。それでも何となく、目線は反らさなかった。







「…告白って、あの?」
「そうだよ。好きなひとに好きって伝えるやつ」
「誰に!」
「わ、びっくりした…」





机をばん、と叩かれて、反射的に椅子ごと後退る。
白石は「あ」と呟き、眉を寄せながらすぐに謝った。いや、べつにいいんだけど。
携帯のワンセグで見ていた午後のドラマは終盤に差し掛かっていて、それを見ながらお茶を飲む。
ぼーっとしている白石のお弁当箱から卵焼きを摘んで、口に入れた。うん、おいしい。







「でも脈無しかもしれないから、まだ悩んでるんだよね」
「……そうなん?」
「うーん…つか、相手が鈍感」






もう一度お茶を飲んで、はぁ、と溜息を零す。ほんと、どうしようかな。
頬杖をついて携帯を開いている白石をじっと見つめる。
…最初は、声だったっけ。
入学式のあとの自己紹介でいい声だなぁって思って、どんどん惹かれていった。



他のことは鋭いのに、一番伝わってほしいことは伝わらない。







「名前の好きな人は鈍感、か…」
「(…やっぱりわたしから言わなきゃだめかも)」








( はやく気付け! )





「聞いたで白石!名字がとうとう告白するんやって?」
「良かったっすね、部長」

「何がええねん……はああ、名前は誰に告白するんや…もう一緒に弁当食べれなくなるんやろか…」

「…この人気付いてないんすか」
「一年の頃からこうや。名字も苦労しとるっちゅうねん…」





***

相互記念文として「Pourquoi」の甘雪ちゃんにささげます*
白石リクエストと言うことで、とにかく暗い話にならないように頑張ったよ!
それにしてはあまり甘い話じゃなくて申し訳無い…(´。`)
よければ貰ってくださいな!そしてこれからもよろしくお願いします!



×