絵日記 赤也の部屋は、いつ来ても散らかっている。 床には服、雑誌、繋ぎっぱなしのゲーム機、攻略本、プリント。 テーブルの上にはお菓子のゴミ、コップ、やりかけの課題。 ……どうやったらここまで汚くできるんだろう。 どうにか座れるスペースを探し、近くに放り投げられた服や雑誌を適当に片付けていると、麦茶とコップを持った赤也がドアを蹴り開けた。 「…行儀悪っ」 「うるせー。…なぁ、麦茶しかねぇんだけどさ」 「何でもいいよ、ありがと」 重要そうなプリントをまとめて、クリップで留める。これは帰りに赤也のお母さんに渡しておこう。 赤也はランニングとスウェットと言うだらしない格好のまま、テーブルの向かい側に座った。 そのうちクーラーのリモコンを探し当て、機械音と一緒に涼しい風が流れてくる。 「クーラーつけていいんだっけ」 「あー…秘密ってことで」 能天気な返答に溜息をついて、コップに麦茶を注ぐ。 と、テーブルの上の課題が目に入った。 表紙には、大きな文字で「絵日記」と書かれている。 ………え、絵日記? 「これ、何…」 「ん?自由研究の絵日記」 「…赤也、マジで言ってんの?」 「なんだよ!別にいーじゃん」 むっとする赤也を見つめて、唖然としてしまう。 こ、この年で絵日記って…!!しかも自由研究?何言ってんのこいつ。 「……中、見てもいい?」 「おう」 恐る恐る表紙を開く。お世辞にも上手いとは言えない絵の下に、相変わらずの字。 ええと、日付は7月30日で…内容は、テニス部の先輩の話だった。 あ、わりと真面目に書いてるんだ。絵日記だけど。 「これが仁王先輩で、こっちが副部長。へへ、上手く描けてるだろ」 「うん…」 これ、絶対再提出になるよ。 と思ったものの、あえて黙っていた。(学習しないとだめだ、赤也は…) ×
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