だらだらぐだぐだ







「仁王雅治くん」
「…何じゃ」
「なんで怠けてんの」
「暑いもん」




…もん、って。笑いが込み上げそうになるのを抑え、そうなんだーと返す。


今日は確かに暑い。窓から差し込む陽光もだけど、朝に真田くんが言った「冷房禁止令」のせいで立海テニス部のメンバーは今にも溶けそうな状態だった。
ちなみに理由は「部活外だから」らしい。


なぜこんな夏休みの真っ最中に、わざわざ暑い部室でぐだぐだしているかと言うと、赤也の勉強を見てあげるためだった。
みんな、何だかんだ言って面倒見いいよね。


まぁ後輩にあれだけ泣きつかれて断る人なんて、部長ぐらいだ。(現に、彼は部室に来ていない)
桑原くんとブン太は、コンビニで買出し中。
暑すぎて熱中症になる前に、飲み物やアイスを買ってくるらしい。いいなぁ、コンビニで涼んでくる二人が目に見える。




赤也は世界史の課題と格闘中、そんな赤也にアドバイスをする柳くん(すごい涼しげな顔してる)と、じっと見つめてる真田くん。
…真田くんは暑そうな表情だ。我慢してるのかな。

で、本気で帰りたそうな仁王くん、それをたしなめる柳生くん、アイスノンを額に当てながらぼーっとしてるのがわたし。


それにしても、暑い。幸村くんほんとに来ないのかな?意外と図書室とかにいたりして。






「なぁ、アイスノン貸して」
「えー…わたしも暑いからやだ」
「俺が熱中症で死んでもええんか?あー悲しいのう」
「仁王くんキャラ変わってるよ」




つっこむと、仁王くんは唸りながら机に突っ伏した。隣に座る柳生くんが苦笑する。
しょうがないなぁと呟いて、アイスノンをタオルハンカチに包み、仁王くんの頬にそれを乗せる。




「おー冷たい冷たい」
「敬いたまえ!」
「柳生の真似か?似とらん…」




一蹴されて、柳生くんの真似をしたのを後悔した。ちょっと似てると思ったのに。
つか、暑さだけでこんなにキャラ変わるんだな…仁王くん。

同じように机に突っ伏して、瞳を閉じる。あー机つめたい。気持ちいい。
早く桑原くんたち帰ってきてよー。喉カラカラ。
そう思っていると、赤也が「終わったぁ!!」と叫んだ。めちゃくちゃうるさい。




「じゃあ俺は帰るぜよ」
「待て、仁王。赤也はまだ数学のワークを終わらせていない」
「……そんなもん柳生に任せれば良か」
「仁王くん!」


「…わたしも帰っていい?」
「あ、先輩には美術の風景画を手伝ってほしいっス!」
「美術なら幸村くんの方が…、…いないんだった…!」






仁王くんとわたしの溜息が重なった。





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