手の平には痩せたあなたの、 「名前」 「ぁ、」 「…名前」 さっきから、幸村くんはわたしの首を絞めている。ぐ、ぐぐ、と、やさしいはずの指が、必死に。首筋にかかる重圧に息を吐き出すと、瞳に映る彼はうっすらと微笑んだ。その顔がとても綺麗で、泣きたくなる。 ねえ、もしかして、嫌いになったの?別れたいの? ( なんで、幸村くんが泣きそうなの ) 「名前がいると、俺、死にそう、」 掠れた声が耳元で聞こえた。 その瞬間、幸村くんの瑠璃色の瞳から、なみだが溢れ出てくる。 わたしの頬に当たって流れる雫は、生温かい。「なかないで」って云いたくて、でも、咽喉からは掠れた息しか出ない。ひゅー、ひゅーって。 精一杯、指先をその瞳にのばしたら、首筋を絞める力が弱まった。 荒い呼吸をするわたしを見て、幸村くんはもっともっと泣く。 悲しいのと愛しいのが混ざって、へんなかんじ。 「あ、ごめん…!ごめん、名前!」 「……ゆきむら、くん…」 幸村くんがごめんね、と繰り返すのをただじっと見つめる。 そのうち、ぎゅうと強く抱き締められ、痺れていた指先を背中に回した。冷たい身体は幸村くんらしくて、安心する。 息が整っていくのを感じ、瞳を閉じた。 手の平には瘠せたあなたの、 (0831 // 心底愛してる人がいると駄目になりそうなタイプだな、と思った話) ×
|