思春期な謙也



「うわっ、わっ、」
「謙也うるさいよ」
「何やねんこれ!!敵生き返るんやけど!」
「ここのボス自己回復するからね」



攻略本を見ながらアドバイスをするわたしに、かちゃかちゃとやかましくボタンを押す謙也。
…ゲームくらい黙ってできないんだろうか。(すごいうるさい)
後輩の財前くんからゲームを借りてきたらしく、「一日でクリアして驚かせるんや!」とか言ってたのは三時間も前。


壁にかかった時計が指しているのは、1時。明日は学校があるのに、夜中までゲームなんて。




「ねえ、わたし帰っていい?」
「アカン!俺がクリアするまで待っとって」
「クリアするの一ヵ月後くらいじゃないの」
「一日でいけるっちゅーねん…っああ!」
「また死んでるし…」





真っ暗な画面に真っ赤な文字でGAME OVER。(これ見るの何回目だろう)
謙也はなんでや!と言ってからまたコンテニューし始めた。
それを見つめ小さく溜息をついて攻略本をぱらぱらとめくる。



「わたし居なくても大丈夫でしょ」
「攻略本の中身わからへんやん!」
「…プレイしながら見れば」
「それができへんねん」



どうしてやろな?と首を傾げる謙也に、下手だからだよとは言えず口をつぐむ。
それにしてもねむい。攻略本を持ちながら部屋に置いてあるベッドに寝転がった。
ぎし、とスプリングが軋む音がすると、謙也がいきなりこちらを振り向く。



「…名前、何してるん」
「あー寝ないから大丈夫だよ。ちゃんと攻略の仕方教えるって」
「せやから、そう言うことやなくて、」


何故か慌てた様子の謙也。頬を染めながら口をぱくぱくと開閉させている。



「(…俺もう、ベッド使えへん…!)」
「あ、主人公死んでるよ」
「うわっほんまや!!」



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