器用な白石



「名前、まず頭狙わな」
「わかってるけどー…」


ぱしゅん、と軽い音がし、銃から弾が出て敵の肩が撃ち抜かれた。
いわゆるホラーゲーム?と言うものらしい。(財前くんから借りてみた)
上手く照準を合わせなければならないのでそれなりに難しく、さっきから苦戦している。


隣で黙々と部活のトレーニングを考えていた蔵ノ介もそのうち画面に釘付けになり、
わたしの下手なプレイを見ては説明書を見ながら口を出す。
簡単に言うけど、これすごい難しいんだって。
蔵ノ介が「どうせならハードモードでやったらどうや?」とか言うから…!


そうこうしているうちに画面が暗くなり、浮かび上がるゲームオーバーの文字。
コントローラーを投げ出して溜息をつく。
蔵ノ介がくすくすと笑った気がしていらっとした。(実際にやってないからそんな余裕でいられるんだよ)



「…蔵ノ介がやってみて」
「もう飽きたん?」
「飽きてない!いいからやってよ」
「はは、わかったて」


そう言いながらコントローラーを手に取る蔵ノ介。難しくてできないって言ったら笑ってやろう!

画面が切り替わり、わたしがセーブしたところからゲームが始まる。
かちかちとボタンを簡単そうに操作して、襲ってくる敵の頭に上手く銃弾を当てた。
う…上手いんだけど…!!(初めてのくせに!)



「ボスも倒してええの?」
「た、倒せるならねっ」



ぷいと横を向いてそう言えば、蔵は左手でわたしの頭をぽんぽんと撫でてくる。
片手でプレイするなんて生意気な…。不貞腐れて体育座りをすると、また笑われた。




「ほら、ボスの体力減らしといたで」
「…うん…ありがと」