秘密の待受画面












部活がはじまった。



この前作ったトレーニングメニューを白石先輩が読み上げ、それぞれが試合を始めたり走りこみをしたり筋トレをしたりしている。そんななか、わたしは先輩の前に立って、じとりと睨むように見据えた。
「先輩、」と呼びかけると、にこっと微笑まれる。…このキラキラオーラには騙されない!







「データフォルダ作ってるってほんとですか」
「……誰に聞いたん?」







驚いたような、それでも楽しそうな白石先輩の顔を見つめながら、「それは言いません」と首を振る。なんとなく、財前くんに迷惑をかけたら裏でシメられそうな気がするからだ。(あれ?イメージ悪すぎ?)



先輩はふぅと小さく溜息をついて、部室に入ったかと思うと、すぐに携帯を取り出してきた。そう、その中にあるらしいデータフォルダを、削除してもらわなければ。誰かに見られたりして余計な誤解を招いたらと思うと、背筋がぞくっとする。


今だって、誰に恨みを買われているかわからない。テニス部はそれだけ、女の子にモテてるし。
頭を抱えたくなるのを抑えていると、先輩は携帯をかちりと開き、画面を見せるようにわたしに向けた。




…え?









「…せ、せんぱい、何ですかこれ」
「俺のお気に入り」
「いつ撮ったんですか!!」







絶句しそうになる。なんだこれ。待ち受け画面に表示されていた画像は、明らかにわたしで、しかも微笑んでいる写真だった。ちょっと待って、先輩の前でこんな顔したっけ…というか、ほんとにいつ撮ったんだこの人。



携帯と先輩とを何度も見比べていると、遠慮がちに吹き出された。は、腹立つ…!!







「真鈴、5月に転校してきたやろ」
「え?…そうですけど」
「で、初っ端から雑用頼まれてて」
「…あー!先生から資料運びを、……何で知ってるんですか?」






訝しげに白石先輩を見つめると、また笑われて、それからぱちんと携帯を閉じられる。







「秘密…っちゅうことにしとくわ」









そう言って意地悪く笑んだ先輩は、わたしが呆気にとられている間に部室に戻り携帯を置き、すぐに手ぶらになってしまった。あ、データフォルダを消してもらおうとしてたのに…!最悪だ、別の話題に釣られて元々の目的を忘れるなんて。長く溜息をついて、空を仰いだ。


…そう言えばあのときの資料、毒草聖書とか言うやつだったなぁ。あれはなんだったんだろう?




 




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