同情の視線で見つめる





(// 謙也side)










数学の授業中。担当の教師が休みらしく、ひたすらワークに集中する。よし、あと3問で終わりや!
それなりに騒がしい教室のなか(まぁ自習やし当たり前やな)、ふと隣の席の白石に目を向けると、珍しく窓の外を見ていた。その表情は真剣そのもので、なにを見ているのかが気になった。

次いで、机に置かれたワークを見る。…うわ、完璧に終わっとる……しかも字も綺麗やし…いつのまに終わらせてんねん。







「白石、何見てるん?」
「体育の授業」
「どこの?」
「2年7組」








財前のとこか。



と思いつつへえ、と呟くと、白石は俺の方に向き直ってにっこりと微笑んだ。
……すっばらしくイケメンやな。せやけど、そう言うことは女の子にしてやれや。
眉間を歪ませて舌を出すと可笑しそうに笑われる。







「にしても…財前か。今日テニスでもしてるん?」
「ん?男子は外でしてへんけど」
「……せやったら誰見てるん」
「名前」








思わず、握っていたシャーペンを落とした。


てっきり、財前がテニスでもしてるんかと思っとったわ。(そうでもなかったら見ないやろ、2年の体育は)
名前って、最近白石が入れたマネージャーの、名字名前やろ?なんや、他の女子より親しみやすい感じの。テニスに関する知識もびっくりするぐらいあるし(聞けば兄貴がテニス部らしい)、仕事もちゃんとするし、ええ子やなぁと思ってたんや。……いや、ちゃう。なんでコイツが、その名字を見てるかっちゅう話や。





すこしの間放心してから、顔を顰めたまま「なんで」と問いかける。

















「脚が綺麗やなー思ってん」









「…は?」
「やから、脚」










あ、し。




白石が喋った単語を、頭の中で上手く処理できず何度も繰り返す。
え、脚、って。どっかの誰かも言ってたような、ああそれ侑士やん、うわぁアイツのこと思い出すとか不覚っちゅうか最悪っちゅうか、












「…なんでやねん!!!」





ばん、と机を叩いてそう言えば、クラス中の視線が集まった。





「綺麗やから、…さっきも言うたで?」
「いや綺麗とかちゃうやろ!!へっ…変態か!」









思いきり指を指してそう言うと白石が僅かに目を丸くして、それから照れたように口元を緩める。なんやねんその表情…!
白石の前後にいた女子が話を盗み聞いていたのか、驚いたような顔をしていた。(ドン引きしとるわこれ)









「名前限定、やな」








ぞわぞわと背中から鳥肌がたっていくのがわかって、思わずイスを引いた。



名字、おまえ、……めっちゃ不憫や。












「ほら、膝裏とかええで」
「ひざうっ……白石、口に出すんやめろ!」

「(…なんか悪寒が…)」




 




×