昨日はよく眠れなかった。ずっと、あの白石くんの苦笑いが頭の中でまわってる。
せっかく親切に教えてくれようとしてたのに。
謙也だって、昨日中色々と気を使ってくれてた。
なんでわたしは、素直になれないんだろう。

もっと素直で可愛い女の子になって、白石くんを祝いたいよ。




「どうすればいいのかな…」












「えー?祝ってあげたらええやん」
「だってもう嫌われちゃったもん…!」


うう、と机に伏せると、友達は困ったようにわたしの頭を撫でる。
ゆるゆると頭を上げ、盛大に溜息をつく。
頑張りたいのに空回りしてばっかりで、自分でもうざったくてしょうがない。(要領よくなりたいな…)


「名前は不器用やねぇ」
「…それ小春ちゃんにもいわれた」



はは、と友達が笑う。

祝って、あげたら。
…でもなぁ、そんなに仲良くもないし…白石くんなら、他の子からもいっぱい祝われるだろうし。
プレゼントだって未だに用意してないし。やっぱりわたしは遠くから眺めてるだけで、いいんだよ。うん。
あ、ちょっと悲しくなってきた。



潤んだ瞳を隠すように項垂れれば、友達が「あ、謙也くん」とつぶやいた。




「おん、はよ!」
「おはよう」


謙也の席に座っていた友達が、チャイムの音を聞いてか自分の席に戻っていく。
それを眺めつつ、謙也に挨拶を返すと心配そうに見つめられる。


「なあ、白石の」
「だ、だから!祝う気ないんだってば…」


そうか、と寂しそうに返されて良心が痛んだ。

ほんとは、祝いたい。心の中ではこんなに祝いたいと思っているのに、口から出るのは正反対のことばかり。
意地っ張り。自分にそう言ってから謙也を見ると、既に鞄から教科書を出したりと授業の用意をしている。

わたしも次の授業の用意、しなきゃ。一時限目はなんだったっけ。












「……おはよう、名前」




後ろから声をかけられ、肩が飛び跳ねる。何度も心のなかで反芻したその声。

白石くんの、こえ。

心臓がどきどきと痛んで、くるしい。いや、落ち着こう。挨拶されただけ。
さすがに挨拶を無視しちゃうのはまずい。確実に嫌われる、…いやもう、嫌うとかそういうレベルじゃなくなる…!
すこし深呼吸してからゆっくりと振り向く。
そこには、すこし緊張した表情の白石くんがいた。



「…お、おはよ」
「おん。…あのな、放課後…教室に残っててくれへん?」



白石くんだとわかっていたのに、がんばって開いた唇からはあまりにも情けない声がでた。
そんなわたしを笑うことなく、白石くんはにっこり微笑んでそう問う。
頭がぼんやりとして正直なにを言われたのかわからない。(な、なんだっけ…)

えっと…放課後、教室に残っててほしい、?




「…あかん?」
「えっ、いや、大丈夫!」
「おおきに。それじゃ、放課後な」



白石くんはほっとしたように息をついて、それから謙也にも「おはよう」と言うとすぐ席に戻っていった。
緊張の糸が切れる。今までにないくらいどきどきした。


今日の放課後。
何があるんだろう。何を話してくれるんだろう。


わたし、どうすればいいの、白石くん。






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