「…ん、どうしてもわからへんかったら、聞いてな」


そう言って名前を見れば、既に彼女は俯いていて唇をぎゅっと噛んでいる。
ああ、やっぱり俺は嫌われてるんやろか。
どうしてもショックを隠せなかったのか、笑ったつもりが、苦笑いになってしもた。




「問題解いてもらおか。じゃー…白石」
「………」
「白石?」
「あ、はい」



授業を聞いてるつもりでも、頭の中が空っぽや。
すぐに立ち上がり黒板に答えを書く。謙也が俺の表情を見て顔を引き攣らせていた。(あかん、しっかりせんと)
ギシリと音が鳴るプラスチック製の椅子にもう一度座り、ちらりと名前を見つめる。
潤んだ瞳と、寄った眉。口元はセーターの袖で隠れていて表情はわからへんけど、少なくとも幸せそうではなかった。


なにかに悩むその額のしわを、俺が取ってやれたらええのに。













「せや、あと今日プレゼントのことも聞いてみたんやけど」
「おん」
「名前にめっちゃ睨まれてん…」
「ははは、」


謙也と二人で弁当を食べながら、話す。
べつに、祝いたくなかったら無理して祝わってくれんでもええんやで。
そうは思いつつも心の中ではきっと、名前からの「おめでとう」を望んでいる。
…うわー、情けな。

名前は知らんのやろな。俺がこんなに、名前を好きなこと。




「俺な、今日かなり頑張ったんやで!」




購買から買ったパンをもぐもぐと咀嚼しながら、謙也がぐっと拳を握る。
俺は箸で卵焼きをつまんで、口に放り入れた。
なんや、謙也がごちゃごちゃにしとる気が…しなくもない。
まあ頑張ってくれてるみたいやから、言わんけど。


箸を置いて窓を開ける。ちょっとは換気しとかなあかんし。
その様子を目で追いながら、謙也が口を開いた。




「メールで「祝ってあげてや」って言ってみたし、朝から白石のこと話題に出したり、
あと化学の授業の!あれええ感じやったろ?でも名前断っとったし…なんやねん!
さっきも、誕生日明後日やでー、って言ってきたんやけど……無視されてん。
ほんまあいつ意味わからん…!!!絶対白石のこと好きやろ。
なあ白石!俺頑張ってるやんな!あとちょっとでいけるんちゃう?
俺あんなことしたりこんなことしたりしたんやで!!」




おん、謙也。それで結局どうなったん?













「せやけど、ぜんぶ駄目やった」
「……はー…」





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