◇ 藤枝くんと白石先輩




「なあ、そこの茶髪の子!」
「え、俺?」
「ん、君」
「………(何やろこのひと)」
「………(なんで黙ったんやろこの子)」
「あー…と…もしかしてテニス部の…?」
「テニス部の白石やで」
「ああ!白石、さん」
「いきなりで悪いんやけど、名前呼んでくれへん?」
「名前……名字さんですか?」
「そうそう。いつもやったら財前に頼むんやけどな…自分にお願いするわ」
「はい、ええですよー」
「すまんなぁ」


「……あ、名字さんも居らんみたいです」
「ほんまに?」
「いやいやぁ、ここで嘘ついても意味ないと思いますよ」
「そうやんな。んー、そうか…居らんか」
「…ええと、なんの用です?」
「うん?んー…何の用やと思う?」
「へ」
「うん」
「……部活関係、とか」
「ブー!ちゃうで」
「…や、普通わからんと思いますけどねぇ…」
「せやろな」
「……(何やろこのひと)」


「…はは、ほんまはイタズラ仕掛けにきただけやねん。あ、でも名前には秘密にしてな」
「い いたずら?」
「まあ軽いやつやけど」
「…あの、内容とか聞いてもええですかー?」
「スカートめくり」
「は…はい?」
「スカートめくりや」
「………」
「名前スパッツ穿いとるから無駄やけど。…無駄か…これやめにしよかな」
「(…名字さんスパッツ穿いとるんや)」
「ん?自分ぼーっとしとるで」
「あ、いや。えーっと…それ軽いイタズラちゃうと思います」
「それが俺と名前の仲なら軽くなんねん」


「………どういう仲です?」
「ラブラブ」
「え」
「うん」
「…ラブラブ?」
「めっちゃラブラブやで」
「……それは、んー、恋人同士っちゅう意味ですか?」
「さー、それはどうやろなぁ。そう言うのは本人に聞いてみるのが一番やで」
「…まあ、気が向いたら聞いてみますー」
「それがええんちゃう?……あかん、そろそろ予鈴か…」
「あ、そうみたいですねぇ」
「それじゃ、ありがとうな」
「いえ、どういたしまして」



「(…名字さんに聞かんと)」
「(敵対心隠そうとしてんのバレバレやったなー)」
「(どう話しかけよかな、放課後でええか)」
「(あの様子やと名前に聞くやろ…名前の怒る顔、楽しみやなぁ)」


120204






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