窓の外に見えているのは、しんしんと降り積もる雪。今日は今年一番の寒い日らしい。
机に肘をついて、外は寒そうだなぁと思いつつ、炬燵の中が暑くなってきたので温度調整のつまみを回して弱に切り替える。うん、丁度いい。
つけっ放しのテレビからは能天気な映像(千歳の提案で8回目のトトロ)が流れていて、なんというか、とてもほのぼのとしていた。
炬燵から頭を出し、すっぽりと埋まってしまえば、じんわりと温まる手足に幸せを感じる。
あったかー、このまま寝ちゃいそう。


「名前」
「…あ、千歳」


頭上から落ち着いた声が響いて、よいしょ、と身体を起こす。
視界には千歳がマグカップを両手に持ちながら、台所からとたとたと戻ってくる様子が映った。
……なんかマグカップが小さく見える。
そう思い少し笑えば、ふと鼻腔をくすぐる甘い匂い。すぐにホットチョコレートだと気付いて頬が緩んだ。


「ん」
「ありがとー」
「良かよ、火傷せんように気ばつけてな」


マグカップを受け取り礼を言えば、頭をくしゃりと撫でられる。
子供扱いされてるようで思わず唇を尖らせたら、それに気付いた千歳が目を細めて笑った。
千歳は和らいだ表情のまま座り込み、自分のマグカップを机に置くと、炬燵に足を入れようとする。(…!)





「……名前、入れて」
「せまい」
「仕方なかよ。俺だってこたつでトトロば見たい…」
「わ、無理矢理入ってこないで!千歳足長い!」
「そりゃ嬉しかねー」
「全然褒めてない!!」




相当台所が寒かったのか、私の言うことも聞かず炬燵に足を押し込む千歳。ばふ、と大きな音をたててあいた掛け布団からは冷たい空気が流れ込んでくる。いや入れてあげたいけど、この炬燵狭い!私が押し出される!
千歳の冷えた両足が私の温まった足に当たり、吃驚してぎゃあ!と叫ぶと、思いきり笑われた。なんなのこの人。


長い足が器用に私の足を挟んで、千歳が口元を緩める。温まった身体が冷えていくようで、すごい嫌だ。
しかも、千歳が無理矢理炬燵に入ると私が入る余裕が無くなり、圧迫された腰が痛い。
なんでこんな惨めな格好をしなきゃいけないんだろう…寒い。



「名前の足、温かね」
「千歳の足冷たい……しかも寒い…狭いし」

「…あ」
「? どしたの」





ふと表情を変えてそう呟く千歳に、首を傾げて問う。
と、千歳は嬉しげにニッコリと微笑んでから炬燵から出た。えっ…諦めてくれた?何だかんだ言って千歳はやさしい…!炬燵が広々としてるし、温かい。またのんびりできる、と思いマグカップに手をかけてホットチョコレートを一口飲む。美味しい…。幸せ!



気の抜けた顔でマグカップを置けば、膝立ちのままのそのそと千歳がこちらに向かってくる。





え、なに?





「ちとせ、」

「こうすれば、狭くなかよ?」







そう言って私の腰を掴み、軽々と自分の足の上に抱き上げて、後ろからぎゅうと抱き締められる。


千歳は幸せそうにへにゃりと笑った。







(なんでそう恥ずかしいことを…、)
「名前、どげんしたと?」
「何でもない!」



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