小春ちゃんと計画していた実行日、9月11日がきてしまった。
小学校の頃は家が隣同士だった、一氏ユウジの誕生日。親同士も仲が良く、いわゆる幼馴染という間柄らしい。

小学6年生から中学2年生まで東京にいたわたしは、毎年毎年、宅配便で適当なものをあげて、「おおきに」とか「おう」とか当り障りのない反応をされてきた。
そんな、特に取り立てて騒ぐことのない日。…だったんだけど、小春ちゃんにとっては違うみたいで。


幼馴染=昔から想いつづけてきた二人…というイメージがあるらしく、「今年こそは絶対両思いになるんやで!」と念を押されて、流されるままに『なにかサプライズをする』なんてことになってしまった。


昔から想い続けてたって言っても…ユウジのことは、中3で大阪に戻ってくるまで、ぼんやりとしか覚えてなかった。
誕生日プレゼントだって親が言うからしょうがなくあげてたようなもんだし。


……両思い、なぁ。ユウジに特別な感情を抱いてるわけじゃないと思う。まぁ、幼馴染として好きって言うのはあるんだけど。(と言ったら「やっぱり好きやないのぉ」とか騒がれてしまった)

うーん……恋愛の好き、なのかな。よくわからない。


悩みながら教室の黒板を見つめる。朝の早い時間とは言っても、だんだんとクラスメイトが教室に入ってきていた。友達と挨拶を交わしながら、ユウジを待つ。







「あっ、ユウジ。おはよう」
「…はよ」




教室の後ろのドアから入ってきたユウジは、ぼそ、と小声で挨拶をしたかと思えば、わたしを睨む。
どうしたんだろう。首を傾げて椅子から立ち上がろうとすると、「ちょお、待てや」と言われた。いや、待ても何も、ユウジに用があるんだけど…。まぁいいか。



「おまえ、小春になんか言うたか」
「? 言ってないけど」
「……なら別にええわ」




ええわ、とか言っておいてすごい機嫌悪そうなんだけど…。えー何、わたしが小春ちゃんと相談ばっかしてたから妬いてんの?だから小春ちゃんに嫌がられるんだよ。
とは言わず、口をつぐんで鞄を開ける。ユウジはわたしの様子をじろじろと見ていたけれど、プレゼントの小箱を出したらさっと目を背けた。





「はい、これ」
「…ん」




誕生日のプレゼントでもぶっきらぼうに受け取るのが、ユウジらしいと思う。こういうとこで誤解されやすいんだよね。照れ屋だなぁ。

がさがさと箱を開ける音が聞こえて、なんとなくユウジの顔を見る。伏せた睫毛の長さや、意外と整った顔にびっくりした。…あれ、こいつ、こんな顔してたっけ…。
直視できずに視線をそらす。あーなんか不覚…どきっとしちゃったような、気がする。




ユウジは小箱の中身を見ると、わたしと小箱を何回か見比べて、それから声を荒げた。





「…名前!なんやねんこれ!」
「誕生日プレゼントだけど」
「そんなんわかってるわ!!」
「えっ何いきなり…あ、おめでとうって言ってほしかったの?」



声を荒げて騒ぐユウジに眉を寄せつつ、おめでとー、と呟くと、めちゃくちゃ睨まれた。


あれ、もしかしてプレゼントが気に入らなかったのかな?
結構自信あったのに……今年は頑張って小春ちゃん型のクッキー作ったんだけど。ちゃんとユウジのやつも作って、隣に置いてあげた。
…大切すぎて食べれないとか?フェルトで人形作ってキーホルダーにすれば良かったかも。てか誕生日祝おうとしてあげてるんだからそんな怒らなくてもいいんじゃ…。



混乱する頭で色々考えていると、ユウジは小箱を机に置いて、わたしの両肩をがしりと掴んだ。
い、いてててて。力強い!なにこれ、本気で怒ってんの!?こわ!





「小春がプレゼント期待せぇ言うから、今日こそ告白しよか思ってたのにお前はっ…!」
「……うん…?」
「俺が空回りすんのがそない楽しいか?あぁ?」
「えっ…ちょっと待って、」
「誰が待つか!どんっだけ待たされたと思ってんねん!!やっと気付いたと思ったら……あ」





気が付けば、わたしとユウジの隣で小春ちゃんがへらりと笑っている。




「誕生日に公開告白なんて大胆やなぁ〜ユウくん!」
「こ…小春…!」
「名前ちゃんのプレゼント見たときはヒヤヒヤしたわぁ。せやけど、結果オーライやね」





嬉しそうな小春ちゃんを見て、ユウジと顔を見合わせた。その瞬間、ユウジの顔が真っ赤に染まる。
ど、どういう、こと。


小箱の中に入った小春ちゃんのクッキーは、割れないようにと入れた白の梱包材に囲まれて、天使に見えた。






( 刺さったのは焦れったいふたり! )




(0911 ユウくん誕生日おめでとう!)


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