「あ、オサムちゃん!いいところに!」 「名前かー、どないしたん」 「今日4月1日だよね」 「そう言えばそやなぁ」 「テニス部のみんなを騙してみたいんだけど…なにかいい嘘ないかなって」 「んー…俺が教師辞める、とか」 「…いいかも…!」 「それであいつらのこと騙してみればええんちゃう?」 「うん、がんばる!」
「あ、白石くん!」 「名前。どうしたん?」 「実は…オサムちゃんが教師辞めちゃうんだって…」 「――ほんまか、それ」 「う、うん」 「…オサムちゃん、が……」 「(どうしよう、本気で信じてる…!!)」 「…まあ文句言うててもあかんな!お別れ会は盛大にしてやろか」 「……えっとね、白石くん」 「? おん」 「うっそぴょん…なんて」 「………」 「エイプリルフールだから…でも怒らせちゃったよね?ごめん…!」 「ふっ、…はははっ…!そうや、四月一日やったな!別に怒ってへんよ。ええ嘘やなあ思って。それにしても…オサムちゃん関連なら何でも信じてまうな」 「ふふ、オサムちゃんのこと大好きなんだね!」 「…どっちかっちゅうと、あの人が教師辞めるのはありそうで信じてしもたんやけどな…」 「…あー……」
「名前ー、そないきょろきょろして、何探してんねん」 「謙也を探してたの」 「えっ」 「走り回ってるからどこに居るのかわかんなかったよー」 「…そ、それで、俺に何の用や?」 「あのね、オサムちゃんが教師辞めちゃうらしいんだって!」 「……、はああああああああああ?!」 「うるさ…!」 「え、ほんまに?!オサムちゃんが辞めるって…、えええええ!嘘やああ…」 「ねえ謙也、今日はエイプリ」 「みんなにも伝えて来るわ!!教えてくれておおきにな、名前!」 「あっ、ちょっと、謙也…!」
「財前くん!」 「何か用すか、名前先輩」 「今日、謙也と話した?」 「……いや、話してへんっすね」 「(よかった!)…あのね、オサムちゃんが教師辞めちゃうらしいよ」 「へえ。やっと辞めるんすかあの人」 「うん…」 「かなり邪魔やったんで居なくなってくれて清々しますわ」 「…あんまり言うと可哀相だよ?」 「嘘つく方がアレやと思いますけど」 「えっ!…もしかして、嘘って知ってた?」 「さっき謙也さんがウザいくらい話してきたんで」 「話してないって言ったのに!」 「名前先輩、今日エイプリルフールっすよ」 「だ、騙された…!!」
「…名前、そげんとこで何しとっと?」 「千歳ー!やっと見つけた!」 「探してくれてたんねー。そりゃ悪かこつしたばい」 「ううん、大丈夫。それよりね、話したいことがあって」 「ん、告白なら受け付けとるよ?」 「ちちちち違うよ…!!何言ってるの!」 「違ったと?残念ばい…俺は名前のこつ好いとうのに」 「えっ!!」 「…お前は本当にむぞらしかねー」 「ち、千歳、」 「はは、こげん簡単に騙されるとは思ってなかとよ」 「あっ…!また騙された…くやしい…」
「名前!!」 「? どうしたの白石くん、そんなに急いで…」 「…オサムちゃん、ほんまに教師辞めるんやって」 「……え」 「こんな日やから信じへんかもしれんけど…。とりあえず、オサムちゃんが名前のこと呼んどったから」 「しょ、職員室…?」 「おん。……話、聞いてき」
「オサムちゃん、」 「おお、名前。早かったやん」 「辞めちゃうって、ほんと?」 「ん、そうやで」 「…今日の朝に、みんなのこと騙そうって言ったの、オサムちゃんじゃん」 「それが嘘や。俺が教師辞めるのが嘘、……っちゅうのが嘘」 「ややこしいよ…」 「はは、ほんまやな」 「ばか」 「関西人にはあほって言わんとアカンでー」 「…オサムちゃんの、うそつき」 「大人はみーんな嘘つきやで」 「……っ」
「せやから、全部嘘なんやけどな」
「…………は、い?」 「なんや名前のこと騙そうって、皆が言っとってなー。まさか涙目になるとは思わんかったわ!堪忍な」 「……え?じゃあ、オサムちゃん、辞めないの?」 「辞めるわけないやろー」 「み、みんなしてわたしのこと騙してただけ…?」 「そやで。あとで聞いてみるとええ」 「ええええ…!!!」
(みんなのばか!)
(0401 // エイプリールフールのお話)
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