3月6日はオサムちゃんの、誕生日。
先生と生徒。こっそり付き合って1年、そんな誕生日の前日だと言うのに喧嘩、してしまった。
理由は、ちょうど5分前のこと。オサムちゃんがあたしのことを後ろからぎゅっと抱き締めて一言、




「名前…、自分ちょっと太なったなー」







……すっごく甘い雰囲気だったのにそんな台詞…!思わず、「太なったな」の最後の「な」の部分あたりでそのまま背負い投げしてしまった。(ちょっともたついたけど)





オサムちゃんは女の子に対するマナーがなってないとおもう。
確かに最近ずっと寒くて部活以外はあんまり外に出ず、炬燵に入ればアイスやジュースばっかり飲んでた、けど!
いや、でも、それでもね?太くなったってなんですか。もうその時点で決めつけてるじゃん!
太ってへん?とかならまだわかる。でも太くなったって。ひどいよね、女の子に対してこの…!




前にもこう言う喧嘩して「女の子なのに!」って言ったら「女の子やったんや」だって。
そんなこと吃驚したような顔で言われたら(たぶんボケなんだろうけど)、「や」の部分で右ストレートを決めるよね。




背負い投げしたらあまりにも上手く決まってしまったのかどーん、なんて音がしてオサムちゃんは倒れた。その痛そうな顔を見てちょっと罪悪感。で、でも許さない!





「先生なんてあの可愛い子とデートしてれば!」
「…んー…?誰や?」
「わたし、知ってるんだからね…!先生なんてもう知らない!」
「知っとるのか知らんのかどっちやねん」




がちゃっ。玄関の扉を開けて飛び出した。









夜風の冷たさに冷静になってみる。今の時刻は21時。外はすっごく寒い。
やりすぎたかな、とも思う。けど、そう言うこと言う方が悪い!…うん、そうだ。



それを愚痴ろうと白石くんのとこに行ってみる。と、可愛い女の子が出てきた。(妹さんかな?)


その子に夜分遅くにごめんなさい、と謝ってから「白石くんいる?」って言ったら吃驚したような顔をしてから、「クーちゃんの彼女やー!」なんて叫ばれたからふるふると首を振った。興味津々な瞳がつらい。
白石くんの彼女かぁ…ファンが怖いし、やだな……なんて考えていたら後ろから白石くんの声がした。





「名前?こんな時間にどうしたん」
「白石くん…!聞いてよ!聞けー!」
「……あー、夜やし落ち着かんとあかんで。な?」





窘められながらも家に迎えられ、白石くんの部屋でさっきまでのことを全部、話す。
コンビニに寄ってたらしい白石くんが買ってきたアイスが、すごく美味しい。(あ、これ太る原因…)
出てきてくれた女の子はやっぱり妹さんらしく、気を使ってくれたのか部屋へ戻ってしまった。
なんだか悪いな…うう、今度白石くんになにか奢ろう。



なんて思いつつも今までの溜まりに溜まった愚痴をだらだらと喋るわたしの口は止まらない。
「喋ってすっきりするんなら聞くで」なんて白石くんも言ってくれたし、もうノンストップで喋ってやる!






「でね、オサムちゃんこの前別の女の子とデートしてたんだよ…!」
「え、ほんまにデートしてたん?」
「うん。すっごい量の買い物してた」
「……その女の子、てどんな感じ?」
「んーと…身長が小さくて、赤い髪してて、元気な感じ?遠くで見たからわかんないけど」
「それうちの金ちゃんや…」




え゛。金ちゃんってテニス部の男の子だよね?あれ、確実に女の子の格好してたんだけど。
白石くんに訳を聞けば、カップル限定で食べれる喫茶店で奢る約束をしてた、らしく。
「やから友香里の服借りたいなんて言うたんかオサムちゃん…」なんて溜息をつく白石くんの携帯が鳴った。


「とらないの?」と目で合図すると、白石くんは「どうせオサムちゃんやろ」と笑いながら電話をとる。





「もしもし?」
『あ、白石。そこに名前居るやろ』
「やっぱりオサムちゃんか。居るで」
『やと思った。一旦代わってくれへん?』
「ええで、待っててな」




白石くんはちらりと此方を向いて携帯を向けた。
わたしは大人しく携帯を受け取り、「もしもし」と小さく声を出す。正直、緊張してて声が出ない。




『名前?』
「うん…」
『さっきはごめんな、』
「ほ、ほんとに傷ついたんだよ」
『おん。せやからほんまごめん』




「…ううん。わたしこそ金ちゃんのこと勘違いしてたり背負い投げしちゃって、ごめんなさい」
『はは、ちゃんと埋め合わせしいや?名前、好きやで』
「!…け、ケーキ買って帰るから待っててね!」
『待っとるわー』



ぶつっ。




電話が切れ、嬉しくって頬がにやける。白石くんに向かってピースしたら頭をぽんぽんってされた。
(白石くんにも今度ケーキ買ってあげよう…!!)










「ただいま!オサムちゃん、誕生日おめでと!」
「おかえり。おおきにな、名前」




(0306 結局のところ、らぶらぶ
オサムちゃん誕生日おめでとう!)



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