23

「あーん?なんだお前らは」

窓際の椅子に悠然と腰掛け何かの書類?を手にしている跡部景吾は方眉を上げ訝しげにこちらを見据えている。

「あ、跡部部長…」
「日吉、何してんだお前。…ああ、そういや例の七不思議解明とやらは今日だったか」
「はい」
「ふーん……」

そういうと跡部は興味が失せたように書類へと視線を戻したが、再び目をこちらにむけ、ボケッと突っ立っている淳と柳沢に視線を合わせた。

「…お前らは確か聖ルドルフの…木更津と柳沢だったか。日吉と一緒になって七不思議解明とは、物好きな奴らだ。……ん、そっちは見ねえ顔だな」
「こちらは…」
「立海3年の風篠でーす」
「…立海か…」

跡部の視線がズレてきて、私の視線とぶつかった。ひええ恐ろしい程の美形。
切れ長で鋭い目、すっと通った鼻筋に大きさも厚さも程よい唇。中3とは思えないほどニキビの一つもない綺麗な肌。
………そして何より、その堂堂たるオーラ。

「(まさに生きた芸術やわぁ)」
「で、お前ら生徒会室に何の用だ?ノックもせずに開けるとは余程急ぎの用事だったんだろう」
「す、すみません跡部さん。実は…」
「この生徒会室も七不思議に関係があるんだーね!」
「あーん?ここがか?」

柳沢が興奮冷めやらぬといった感じで言うと、その横から淳が冷静にフォローを始めた。

「この生徒会室はラップ現象が起こるらしいんだ。例の七不思議の6番目だよ」
「ラップ現象だと……?だが俺様の知る限り、今日は何も起きちゃいねえな」
「そっそんなはずないだーね!現に俺達はさっき扉の外で聞いたんだーね!」

くわっ!と効果音がつきそうな勢いで柳沢が身を乗り出しながら言う。
そう、私達は確かに、扉の外で音を聞いた。
だが当の部屋の中にいた人間が聞いていないというのは一体どういう事だろうか。

「ふん、まあ調べるなら好きにしな。ただし邪魔だけはするなよ」
「ありがとうございます。では…」

とりあえず探索の許可を取ると、日吉はスチャッとカメラを装備し部屋の隅から順番に撮り始めた。
時たま写真を取ると現れるダイヤモンドダストのようなキラキラした光、"オーブ"の撮影が目的だ。
別名玉響(たまゆら)とも呼ぶらしいそれは埃や水滴などがフラッシュの強い光の反射によって光る自然現象であるという説と、霊魂などが写り込んだ心霊現象であるとする説の2つがある。

「……何も写らないな」

パシャリ、と撮っては小さな画面を皆で覗き込んで確認する。
今の所それらしいモノは写っていない。

「チッ……じゃあ次はあっちの給湯室いきましょうか」

小さく舌打ちをした日吉が指差したのは、生徒会室に併設された給湯室。
……生徒会室に併設された給湯室?
生徒会室といえどただの教室に給湯室が併設されているというのはどういう事なのか。
さすが金持ち学校というべきだろうか。

「……これが格差か」
「ん?」
「いやなんでも」

ぼそっと呟いた言葉に淳が反応したがスルー。
どうせルドルフも結構いい設備なんだろうな。畜生!
心の中で妬みの声を上げ、いざ行かんと給湯室の扉に手をかけた。
その時だ。

パチッ…パチンッ…。

「!!」

ラップ音。
四人で顔を見合せ扉に耳をつける。
しかし、どうやら音は給湯室からではないようだった。
一体どこからだ……?と思い何となく後ろを振り返る。すると、衝撃のモノが私達の目にうつった。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

頬杖をつき何かのファイルに目を通している跡部景吾は、頬杖をついている手とは逆の右手で、小さくパチッ、パチンッと指をならしていたのである。

「え……え?」
「……嘘」
「マジか」
「…どうやらマジです」

癖なのだろうか、それはごく自然な動作で、あの美形のおかげもあって何の嫌みもなくすんなりと目にうつり込んでくる。
………ってか、

「(気づけよ自分!)」

こんな近くに音の発信源あって振り向くまで気付かないとかどんだけだ。
確かにほんの少しだが音は天井や壁に反響しているようではあるが……。

「やれやれ…ですね」
「全くだ」

同じ事を考えていたのであろう日吉とため息を吐いた。

「では跡部さん、俺達はこれで失礼します」
「ああ。…ラップ音とやらの正体はつきとめられたのか?」
「…ええ。おそらく建物の軋みか何かでしょう。写真にも霊的なモノは写りませんでしたので…」
「軋み?……そうか、1度検査を依頼してみるか」
「そうですね。では俺達は次に行きますので」
「……」

すんなりと涼しげな顔で嘘をついた日吉を横目で追いつつ、出口へと向かう。
しかし、やはり6番目もオカルトでもなんでもないものだった。
これは最後の七不思議も期待はできそうにない。

「まて」

次へ向かおうと扉に手をかけたところで、跡部に呼び止められた。
跡部はトントンと書類を机に叩き整理すると、立ち上がってニヤリ笑みを浮かべた。

「俺様も同行させてもらおう。構わねーよな?日吉」
「えっ…」

思わず驚愕の声が漏れる。
えっ、だって跡部さんこういうの興味あるの?馬鹿馬鹿しいとか言って鼻で笑うタイプかと。

「…まあ俺は別に構いませんが」
「俺も構わないだーね!」
「僕も。怜もいいよね?」
「…う、うむ」

断る理由も特にないし構わないが、あの俺様タイプは現実にいたら結構苦手なタイプだ。
拒む訳ではないが、自分から関わっていくのは難しい。
……大丈夫、相手が話しかけてきたらさらっと受け答えをすればいい。こちらから話しかける必要なんかない。

「じゃ、行こうか」





そして、合流

(さーて、7つ目はどんなかなっと)






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うわあああいまたまたこんなに経ってしまったよっと\(^Д^)/
本当にすみませんorz



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