「名前、どうしたん?隈ちゃんえらいことになっとるけど」
「あー…うん」
「悩み事やったら言うてよ」
「うん、ありがとう」


昨日の事をいろいろ考えすぎて結局一睡も出来なかった。
お陰で隈が出来てしまって、仕方なくコンシーラーを使って一生懸命隠してみたけれど、上手くは隠れてくれなかったようだ。

本当ならあの場ですぐに財前くんに本当のことを言わなければならなかった。
けど、財前くんの表情を見たら口が震えて何も言えなかった。







ゆっくりと時間が経ち昼休憩になった。
私は友人たちと中庭でお昼ごはんを食べるのが定番。
だからお弁当を持って友人たちと教室を出る。

するとその時、「っ苗字さん!」と私を呼ぶ声が聞こえて振り返る。
そこには少しだけ頬を赤く染めた財前くんがいて、思わず体が強張る。
隣で友人たちが何か言っているけれど、上手く耳に入ってこない。


「昨日はメールの返事出来んですまん」
「いっ、いいよ!気にしないで!」
「あ、あと、それでな、あの、今日良かったら一緒に昼飯食わん?」


語尾につれて小さくなっていく言葉。
律義に謝ってくれたことにもびっくりしたけれど、まさかお昼ごはんの誘いが来るだなんて思ってなくて体が固まる。
すると背中がぐっと押されたかと思うと、ニタァと笑った友人の顔が視界に映る。


「どうぞどうぞどんどん連れてって!」
「っ、ちょっと」
「照れんでええやん!ほら、はよ行き!」


普段はか弱い癖にこういう時だけ力が出るのは女の子の七不思議だ。
油断していたから、目の前にいた財前くんに勢い良く突っ込む。
すると肩に財前くんの腕が回っているのが見えて、顔が段々と火照っていく。
耳元で聞こえた財前くんの声と、たくさんの人の視線で体が溶けてしまいそうだ。

20130109