苗字さんを家に送った後、速攻で自宅へと帰り、制服も着替えずベッドへとダイブ。
あれから30分以上は経っとるにも関わらず、苗字さんに触れていた掌が、まだ温もりを残しているように感じてしまう。


「…心臓壊れるかと思った」


抱え込んだ枕に、跳ね踊る心臓の鼓動が伝わっとる。
さっきの事を思い出すと、また顔が熱くなるのが分かった。


「勢いで抱きついてもうたけど、あれあかんかったとちゃうんか…」


あの時は内心、めっちゃ興奮しとったから思わず抱きしめてしまったけど、冷静になった今考えると、最悪やったと思う。
あれで嫌われてしまったらどうするん?
やっと両想いになったのに最悪やん。

そう思っていたらズボンのポケットに入れとる携帯のバイブが鳴った。
誰やねんと思いながらメールフォルダを開くと、タイトルに[苗字です]と書いてあった。


「っ、いってぇ」


まさか苗字さんからメールが届くと思ってへんかったから、驚いてベッドから落ちてしまった。
こんなん人には絶対見せれん姿や、と思いながらも、震える手でメールを開く。


「家まで送ってくれてありがとうございました。財前くんもおうちに帰れたかな?また明日ね。」


思わず叫びそうになるのを必死に堪えて、携帯を握りしめる。
おうちって何やねん!可愛すぎやろ!
しかも俺のこと心配してくれるとか、彼女か!


「彼女…やんな」


自分で言って自分で恥ずかしなるとか、今なら謙也さんに馬鹿にされても仕方ない。
すぅ、と大きく深呼吸して、またメール画面を見る。


「返事なんて書こう。ちゅーか、明日どんな顔して会えばええねん…」


苗字さんに会ったら顔の筋肉が緩むことなんて、目に見えとる。
想像してニヤけてしまった顔を叩いたのに、また次の瞬間には顔が緩んでしまった自分は相当浮かれとると思う。

20121210