朝練が終わり、先輩等といつものようにダラダラしながら生徒玄関へと向かう。
今日もあの人らめっちゃやかましかった。もう少し静かに出来んのか、なんて思いつつ、ほんまにあの人等が静かになったらきしょいからな、と思う。

目の前で騒ぐ先輩等を横目に、俺はちらほらといる生徒を見る。
当たり前やけど、その中には俺の想い人なんておらんくて少し肩を落とす。
学年は一緒でもクラスがちゃうから中々会えへんっちゅーのが現実。
やから一瞬でも視界に入れたいと思うのは健全な男子高校生として当たり前やと思う。

まぁ、ほんまはそんな関係以上になりたいっちゅーのが本音やけど。



なんて考えとったらいつの間にか生徒玄関に着いとって、俺はさっさと自分の下駄箱へ向かう。
ふわぁ、とあくびをしながら自分の上履きに手を伸ばそうとしたけど、ピタリと手は止まる。

あぁ、またか。人の気持ちを厚意として受けとれんくなってきとる俺は人間としてあかんと常々思う。
けど、興味がないだけやなくて、名前も顔も知らん女なんかに好きだのなんだの書かれた手紙なんて貰ったって嬉しくない。ちゅーか、キモイ。

ピンク色の封筒を手に取り、スクールバッグに適当に入れる。
この手紙があの子からやったらめっちゃ嬉しいのに。

…まぁ、中学、高校と同じクラスに一度もなったことないから俺の事を知っとるかすら分からんのだけど。







昼休憩になり、俺はスクールバッグを持ち教室を出る。屋上に向かう途中で金ちゃんと出会った。
俺にもこれぐらいの人懐っこさがあれば、今頃あの子と知り合いぐらいにはなれたかもしれんなぁ、ありもしない事を考えるなんて末期症状や。こらあかん。

屋上のドアを開ければ目の前に広がるのは先輩等の姿。
餓鬼がそのまま大人になったみたいなこの人等はいつでもどこでもテンションが高い。
ちょっと分けて欲しいぐらいやわ。


「おー!財前と金ちゃん一緒に来たんか!」
「せやねん!あー、腹減ったー!」
「はよせぇ財前!飯食われへんやん!」
「…ユウジ先輩はもう食べてますけど」


うるさいのはもうデフォルトやから仕方ない。
静かにため息をついて銀さんの隣に座る。ここが一番安全や。

スクールバッグから弁当を取り出せばそれを仕切りにみんなが一斉に弁当を食べ始める。
別に待たんでも先に食ったらええのに。相変わらず変なとこで気使う人たちやな。

くだらん話をしながらでも箸のスピードは衰えない。
あっという間にたいらげ、俺は適当な所に行きオーディオを取り出してヘッドフォンを耳につける。
今流行のラブソングが流れ始める。あー、俺もこんな恋愛したいわ、ボケ。

20120412