私を抱きしめてくれている光の体温が痛いほどに心地良い。
きっと、言いたいことは山ほどあるのだろう。

それなのに、泣いている私を慰めるように優しく背中を撫でてくれている。
その優しさが、また私の心を痛めつけていく。


「ごめんっ、ごめんね…!」


光の胸元を握りしめ、今にでも倒れそうな体を必死に支える。
私はなんて身勝手な女なんだろう。嫌われたって自業自得だ。


「何で謝るん?」


想像していたものと違う言葉が落ちてきて、思わず光を見上げた。
その表情は怒っている訳でなく、ただ疑問として私を見ていた。


「なんで、って、」
「好きになるきっかけなんて何でもええやん」
「、でも」
「名前がどいつのこと好きやったか気になるけど、今は俺のこと好きなんやろ?やったらええやん。どこに謝る必要あるねん」


光はそう言うと、指で涙を拭った。
優しく微笑むその表情に胸が酷く締め付けられる。

私はただ光を見つめる。
そして光も私を見つめたままだ。


「好きや」
「、ひか、」
「好きやで」
「っ、好き、私も好きっ、」
「俺ら両想いやん」


すると光の綺麗な手が、私の両頬を優しく包む。
私は目を瞑る。すると頬に涙が伝っていく感触がした。

顔に掛かる優しい吐息。
そして唇に触れた温もりに、身を委ねた。

20130516 end