待ちに待った苗字さんとの初デートの日。 楽しみ過ぎて全然寝れんかったけど、目はギンギンに冴えとるのが可笑しくて仕方ない。 テニスをする訳やからデートとしては色気がないけど、一日一緒におれると思っただけで頬が緩む。 鏡に映った締まり気の無い顔をした自分の頬を思いっきり叩くけれど、すぐに口元が緩んでいった。 ・ ・ ・ 天気のいい休日やというのに公園のテニスコートは図ったように誰もおらんくて、俺と苗字さんの二人きり。 それだけでもドキドキやのに、普段髪を下ろしとる苗字さんが今日はポニーテールにしとって動く度に白いうなじが見える。 テニスをするのは初めてやって言っとったのに、苗字さんは想像以上にボールを追いかけるのが上手い。 元々運動神経が良い方なのかもしれんけど、体力は少ないようで5分も経たないうちに息を荒げた。 無理をさせるのは良くないから日蔭のベンチに座り休憩を取る。 日に焼けていない白い肌に汗が流れる。 それがやけにそれが色っぽくて目が奪われてしまい、頬をピンクに染めた苗字さんに「どうしたの?」と聞かれて慌てて話を逸らす。 「あー、それにしても今日めっちゃ天気ええなぁ」 「そうだね。まるで私たちの為に晴れたみたい」 そう言って微笑んだ顔に胸がどくんと揺れた。 あかんあかんあかん!ほんまにもう可愛すぎるやろ…! 「そや。あの、俺、苗字さんにお願いがあるんやけど、」 「お願い?」 「…名前、って呼んでええかな、」 付き合い始めてからずっと、苗字さんの事を名前で呼びたいと思っとった。 けど、中々そのタイミングが掴めんでダラダラ延びとったけど、今がその時やと思う。 きっと今の俺は耳まで真っ赤になっとる。 そんな俺が苗字さんの目に映っとると思ったら恥ずかしくてたまらんけど、仕方ない。 「光」 「え!?」 「って呼ぼうかな、私も」 苗字さんの口から突然出てきた俺の名前。 それだけやのに心臓が弾けてしまいそうだ。 20130416 |