昼休憩が終わり、教室に帰れば友人たちからの質問攻めだった。 けれど私は曖昧な答えしかできず、ただ苦笑いを零していると「照れんなや!」と言われ、思いっきり背中を叩かれた。 放課後、テニス部の練習を見に行くと約束したからHRが終わった後テニスコートに行こうとしたけれど、場所が分からないことに気付いた。 だからと言って約束を破る訳にも行かず、一番仲の良い友人に頼めば、ニタァと笑いながら私の手を取った。 ・ ・ ・ 「へぇ。テニスコートってこんなところにあったんだ」 「そんなことも知らんでよく財前くんの彼女になれたなぁ」 「…うん」 「…責めとる訳ちゃうからな」 「分かってるって」 急に申し訳なさそうな表情をした友人の背中をぽんぽんと軽く叩く。 それから友人と別れ、ゆっくりとテニスコートへと向かっていく。 ただ、想像以上に女の子が多くてきょどってしまう。 テニス部の人気は噂で聞く程度だったから、目の前で見てしまうとその凄さを改めて感じてしまう。 「どうしよう…」 女の子たちの中を割り込む訳にも行かず、呆然と突っ立っているしか出来ない。 きょろきょろと辺りを見渡している時、急に女の子たちの悲鳴が響いた。 驚いて思わず飛び跳ねてしまうと同時に「苗字さん!」と名前を呼ばれ振り返る。 「財前くん、」 「すまん。向かえに行こうと思っとったんやけど、ミーティングが長引いて…」 「う、ううん。そんないいよ!ありがとう」 さっきの悲鳴は財前くんが現れた事によって上げられたものだろう。 現にさっきからチクチクと女の子たちの視線が突き刺さって来る。 「部長にも許可取ったから、こっち」 「え?」 「コートん中」 そう言うと財前くんが私のスクールバッグを手に取ったかと思えば、空いている方の手が私の肩に回った。 思わず体が強張ると、財前くんの綺麗な指が私の髪の毛を撫でた。 あまりの恥ずかしさで体が溶けてしまいそうだ。 20130307 |