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暇が欲しいとかニートになりたいとか夢を語ってたあの日の自分が羨ましい。

実際暇になると何をしていいか分からない。
ただ一日中寝転がって、あー、やら、うー、なんて言葉にならない言葉を発して、でんでん太鼓とかで遊んでもらう。
それ以外は自分のプニプニした手を見詰めたり、寝ていたり。
いや、実際今の私は食っちゃ寝することが仕事だけれど、流石にもう飽きたから少し、昔の事を思い出す事にした。

あれは私が大学へと向かう、丁度午後を回った時だった。
あー、ダリーなんて思いながらのろのろと大学への道を歩く。
高い高層ビル、蟻のように沸き上がる人。

そこまではいつも通りだったのに、キーッとタイヤが擦れる音がしたかと思えば目の前にトラックの光、そして視界はブラックアウト。

そして目を開けば、純和風の部屋にいてほぼ成人体系と化していた体が赤ん坊になっていたのだ。
恐らく、私はトラックに引かれて死んだのだろう。
だとしたら、これが輪廻転生というやつだろうか。
しかし記憶を持って生まれ変わるなんて、自分は大層不運だと思う。
過去の記憶なんて必要ないのに。


「あー」
「ん?なあに?」
「あーあーうー」


しかし、喋れないというのは非常に不便だ。
この姿になってから、改めて言葉を発する事の大切さを学んだ気がする。

私を抱っこしている女の人は所謂"姉"というカテゴリーに入る人だ。
黒い髪に白い肌、言うならば大和撫子というのがぴったりだろう。
穏やかで笑顔を絶やさない人だ。
察する所によると両親はいないようだ。


「今日は天気が良いし、ひなたぼっこでもしましょうか」
「あーあー」
「うふふ。嬉しいの?」
「あー」


小さな腕をいっぱい伸ばして、声を上げて喜びを表現すれば、日向みたいな柔らかい笑顔が降り注いだ。
これが何度目の人生かは分からないけれど、これは私の新しい人生なのだ。

とりあえず苗字名前改めて片倉名前として楽しく生きていこうと思います。

思いのまま生き急げ
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