::24

あれ以来、梵天丸くんは光を取り戻したかのように、いつも通りの笑顔でいることが多くなった。
それは私にとっても嬉しいし、梵天丸くんにとっても良いことだ。

けれど、その代わりに問題が増えた。
奥方様が梵天丸くんと絶縁状態になったのだ。
あれ程可愛がっていたのに、たかが病気で後遺症が残った程度でここまでなるだなんて思ってもいなかった。
部屋から出ず、ずっと竺丸くんに付きっきり。梵天丸くんの話題を出せば、急に気が狂ったようになるのだ。

その雰囲気は城中に伝わり、とうとう女中までもが梵天丸くんに近づかなくなった。
確かに大きな跡を残してしまったけれど、何も変わっていないのに。
まだ幼い梵天丸くんに、この状況は苦痛で仕方ないだろう。

そう思ったのは私だけでなく、姉の気使いにより梵天丸くんは他の人より少し離れた部屋になった。


「できた!」


そう言って傍にいる梵天丸くんに見せると「なにそれ?」と聞いてきたから、思わずにやけてしまう。
私は手に持ったそれを、優しく梵天丸くんの右目に当てる。
そして両側の紐を耳に掛けてあげる。


「わ!かっこいい!」
「かっこいい?」
「うん!ほら、みて!」


きょとんとした表情の梵天丸くんの顔が手鏡に映ったかと思えば、ゆっくりと笑顔になっていく。
そして大きな瞳を輝かせ、私を見た。


「すごい!名前、ありがとう!」
「どういたしまして。でも、わたしじゃへただから、ねえさまにつくりなおしてもらったほうがいいかも」
「ううん。ぼくは、名前がつくったのがいい!」


梵天丸くんの右目を隠す眼帯は、私が作ったものだからとても歪だ。
けれどそれがいいと言ってくれた梵天丸くんの言葉に胸が熱くなる。


「名前がぼくのためにつくってくれたなんて、ぼくはしあわせものだね」
「もう、おおげさだよ」
「そんなことないよ!ぼくはいちばんの、しあわせものだよ」


そう言って照れた表情をして笑った梵天丸くんが可愛くて仕方なくて、思わず飛びつく。
そこからなんて事無いじゃれ合いが始まったけれど、突然部屋に入って来た兄によって中断させられたのが、少し悔しかった。
なんなら兄も一緒にじゃれ合えばよかったのに。

永遠の為の一瞬
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -