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私の瞳に映った梵天丸くんの顔は、私が知っているものと違っていた。
抉れたように変形している右目。これは高熱の後遺症なのだろうか。
触れようと思い手を伸ばすと「だめ!」と甲高い声が響く。


「名前にうつっちゃうから、」
「うつらないよ」
「うつるよ!」
「うつったら、いっしょのおかおになれるんだから、べつにいいじゃん」


私がそう言うと左目が大きく見開いたかと思うと「名前は、こわく、ないの?」と途切れ途切れに問う。
それに対して、私はゆっくりと首を縦に振った。


「みぎめがみえなくなっちゃったら、ぼんてんまるくんはぼんてんまるくんじゃなくなるの?」
「ぼくは、ぼくだよ、」
「ならいいじゃん」
「だけど、こんなにみにくいかおになってしまったし、ははうえはきがちがってしまったかのように…!」


梵天丸くんはそう言うと、下唇を噛む。
そこから、じわり、と赤い血が滲んでくる。


「それなら、ほら。こうすればいいの」


そう言って私は梵天丸くんの右目を掌で覆い隠す。
そしてにっこりと微笑めば、梵天丸くんの手がゆっくりと右目を覆っている手に触れた。


「ぼんてんまるくんは、みにくくないよ」
「、え」
「これは、ぼんてんまるくんがいきぬいた、あかしなの」


すると、梵天丸くんの瞳がゆっくりと滲み始めたかと思うと、ぽたり、ぽたりと大粒の涙が落ちてくる。
そして勢い良く私に抱きついてきたかと思えば「名前!名前っ!」と何度も名前を呼んだ。

例え形が変わってしまっても、梵天丸くんは梵天丸くんで変わりない。
私は今すぐにでも壊れてしまいそうな、小さな体を強く強く抱きしめた。

私が目隠ししてあげる
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テーマ「人外ファンタジー」
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