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竺丸くんが生まれて数ヶ月。
今じゃもう目が開いて、真っ黒でくりくりのお目目が私を映すようになった。
ちょっぴり涎臭いけれど、ぷにぷにの頬っぺたとか手とかが可愛いから、それもまたプラスにしかならない。

梵天丸くんと一緒におむつを代えてギャアギャア騒いだり、一緒にお風呂に入ってやっぱりギャアギャア騒いだり、それなりに楽しい日々を送っていた。


「名前、そこに座れ」
「うん、なあに?」


桜も散り、夏独特の日差しが地上を照らす、そんな日だった。
私の名前を呼んだ兄の表情は、今まで見たことないぐらいに真剣な眼差しであった。
どうしたのだろう、そう思い私は兄の前で正座をした。


「お前は今年で齢いくつになる」
「よっつです」


そう言うと兄は小さく「そうか…」と呟いた。一体何なんだろうか。
この家では4歳になると何か儀式でもするのだろうか。
そう思いながら私は兄をジッと見つめた。


「名前、片倉家は誰に仕えているか知っているな?」
「だてけです」
「そうだ。ならば、頭の良いお前になら理解出来るな」


私と兄の視線が交わる。
真剣な瞳をした兄とは違い、私の頭の中では「あぁ、そっか」程度の言葉が零れ落ちた。

いつかはこうなる事を理解していたけれど、その場に立ち会うと結構思うこともあるようだ。
それでもこれは私はここに生れ落ちた運命であり必然なのだから、逆らうなんて馬鹿馬鹿しいことは、絶対にしない。


「かたくら名前、だてけにりっぱにおつかえできるよう、がんばりたいとおもいます」


私はそう言って、兄の鋭い瞳を強く見つめた。

向かう場所、迷い道
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