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梵天丸くんの家に着いた時には精気が抜けていたと思う。
せっかく整えてもらった髪の毛は全身に浴びた強い風によりボサボサになってしまった。
でっかい門の前で姉と梵天丸くんが私達の到着を待っていてくれていたけれど、疲れきった私を見て二人は顔を真っ青にしたのが酷く印象的だった。

その後、兄が姉により叱られたのは言うまででもない。


「よし、完璧」
「ほんと?」
「ふふふ、本当よ」


姉に手を引かれるまま連れて来られたのは綺麗な和室。
そこで髪の毛を綺麗にしてもらい、着物も念のため再度着付けてもらった。


「このきものとかんざち、にいたまがえらんでくれたの」
「まあ、そうなの?」
「うん。わたしがおそらのいろ、すきっていってたの、おぼえててくれたの」


えへへ、と笑いながら床へと伸びた長い袖を揺らすと太陽の光に照らされて、着物に描かれた柄がキラキラと輝いた。
姉はやっぱり綺麗な笑顔で、私の頭を優しく撫でてくれた。


「さ、小十郎も梵天丸様も待たせているから行きましょう」
「うん!」


姉の暖かい手をぎゅっと握って部屋を出る。
引かれるままに連れて来られたのは明らかに扱いが違う障子が連なっている場所だった。
姉は正座をし、私も隣で正座をするように言われ、冷たい廊下に膝を落とした。


「奥方様、喜多でございます。妹の名前とご子息様の謁見をしに参りました」
「待っていましたよ。お入りなさい」


障子の向こうから優しい声が聞こえ、姉はゆっくりと開ける。
そしてまた手を引かれながら、部屋へと入った。
そこには布団に寝た奥方様と赤ちゃん、そしてその横に兄と梵天丸くんがいた。


「名前!ぼくのおとうとだよ!」


梵天丸くんが私の手を掴み、そのまま赤ちゃんの元へと連れていかれる。
まだふよふよで、ふにゃふにゃで、目も開いていなかった。


「竺丸っていうんだ!」
「竺丸くん?」
「そう!」


梵天丸くんはキラキラの笑顔でそう言った。弟が出来て嬉しいのだろう。
その笑顔を見たら私も自然と笑顔が溢れた。

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