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朝、いつものように目が覚めた。
冬へと向かっているから少し肌寒いけれど、それすら心地よい。
隣には静かな寝息を立ててぐっすりと眠る、まだあどけない顔をした兄がいる。

最近、兄は野菜を育てることを止め、剣を振りまわすことが多くなった。
振りまわすなんて言い方は酷いかもしれないけれど、私にはそうにしか見えないのだ。
汗なんてかかないだろう、こんな季節に額から汗を流し一心に練習している。

そういえば兄は将来は梵天丸くんに仕えると言っていたから、それに向けてなのだろう。
私は未だに梵天丸くんが何者か分からないけれど。


その時、障子の隙間からビュウと冷たい風が入り込み一瞬にして鳥肌が立った。寒い。
私は体をくるくる回して兄へとぴったりくっついた。
やっぱり心地よい体温だ。

いつもならもう起床する時間だから起こしてあげるべきだろうか迷ったけれど、兄はそうとう疲れているようだし、私自身まだ眠い。
両手を使って兄の腕にしがみ付き、私はまた目を瞑った。


次目が覚めたときには隣に兄は居らず、その代わりに外から途切れ途切れの呼吸音と共に風を切る音がした。
すっかり二本足で歩けるようになった私は、朧ながらもゆっくりと縁側に向かって歩き、障子を開けた。
そこには朝日に照らされるようにしてビュウビュウと剣を振り回している兄がいた。
少しの間ぼんやりとその姿を見ていたらバチリと目が合い「おはよう」と言われたので、おあおあ、みたいな感じの言葉で返事をした。

それからと言うものの、兄は私にご飯を食べさせてからまた剣を振り回し始めた。
最近では一人で遊ぶことが多くなり、鞠を転がしたり両手で投げたり、兄の目の隙を見計らって部屋を脱走して怒られたりと、それなりに楽しく過ごしてはいるがやはり構ってもらえないとつまらないので、そろそろ梵天丸くんと遊びたいなと思う今日この頃である。

大事に閉じ込められて
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