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ぽかぽかとした陽射しが地上を優しく照らす。
少し離れた場所でせっせと畑の野菜たちに愛を与えている兄を乳母車の中から見るというのが、ここ最近の習慣だ。

野菜たちは小さな芽からどんどん大きくなって、最後には立派な実を付ける。
私だったら絶対に出来ないことだ。
腰だって痛くなるし、爪の中に泥が入るから嫌だし。正直、食べものには困っていない。それが武家というものなのだろうか。

そういえば、税金として農民から米とかもらってるんだっけ…。
こんなことだったら小学生の時、しっかり勉強しとくんだった。
なんて、今更後悔しても遅いのだけれど。


「名前、ご飯にしようか」
「あー!」


考えることに夢中になっていたようで、目の前に兄が来ていたことに全く気づかなかった。
眉間に皺を寄せて神妙な顔をした赤ん坊なんて嫌だよね。自分の足見ててよかった。

兄は私を抱き上げて、自分の膝の上に座らせた。
藁に包まれたおむすびは4つ。それとプラスでたくあん数個。
そう思ったら前世の私はただの平民なのに本当に贅沢なモノを食べてたんだな。感謝。


「ほら」


おむすびを一口ぐらいの大きさに千切って私の口の中に入れる。しょっぱい。
それでも、こんな陽射しの下で農作業をする兄にはこれぐらいが丁度いいだろう。
熱中症とかで倒れられたら困る。

最近生えてきたばっかりの小さな歯で(発達は早いようだ)モグモグとご飯粒を一生懸命潰していると、「たくさん食べて一日でも早く梵天丸様に御使え出来るように大きくなれよ」と言って私の頬っぺたをぷにっと掴んだ。

ボーダラインの上
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