朝、目が覚めて一番に好きで好きで堪らない人が視界に入るということがこんなにも幸せなことだと思わなかった。カーテンの隙間から差し込む朝日によって色素の薄い髪の毛はキラキラと輝いている。たらりと垂れ下がった前髪に触れれば、小さく声が聞こえて慌てて手を離す。

それにしても蔵ノ介は寝ていても綺麗な顔をしている。まるで人形のようで、このまま一生目を覚まさないのではないかと不安になる。


「、起きてよ」


確かに小さい声で言ったはずだったのに、髪を弄っていた手を掴まれ、そのまま私は蔵ノ介に覆いかぶさるような格好になってしまった。


「姫様の声で目が覚めたわ」
「…いつから起きてたの?」
「名前が起きる前から」


可愛い寝顔やったで、蔵ノ介はそう言うと上体を少し起こして、ちゅ、と軽く口付けた。あまりにも出来すぎたそれに、くらり、酔ってしまったようだ。蔵ノ介の薄いけれど鍛えられた胸板に体が落ちれば、筋肉質な腕が私を包み込んだ。


「俺、今めっちゃ幸せ」
「わたしも、」


その続きは整った唇によって遮られてしまった。私は蔵ノ介の首に手を回し、一センチ、一ミリでも互いの剥き出しの肌を重ね合うように強く強く抱きしめた。

20120218