愛することは、決して互いに見つめ合うことではなく、一緒に同じ方向を見ることだ


「なにそれ?」
「フランスの作家のサン・テグジュぺリが残した言葉だよ」


精市くんはそう言うと手に持っていた本を棚に戻して、私の隣に座った。じぃ、と見つめる綺麗な瞳には変な顔をした私が映っていた。私は読んでいる本に栞を挟んでからテーブルに置き、精市くんへと体を向ける。すると細くて白い綺麗だけれど骨ばった指が私の髪の毛を撫でた。たまに耳に触れるからくすぐったくて身を捩ると、「名前は本当に可愛いね」と言って微笑んだ。


「ねぇ、名前」
「ん?」
「俺らはこれから先、ずっと同じ未来を見ていられるかな?」


小さく呟いた精市くんの表情はなんだか切なく感じたのは気のせいではないと思う。私は髪の毛を撫でている手を取る。暖かいのに何故だか冷たく感じる。


「あのね、精市くん」
「うん」
「私、まだ子どもだし、そうじゃなくてもこれから先のことなんて分かんないよ」
「…」
「でもね」
「、うん」


精市くんと想いが繋がった時に、"私はこれから先ずっとこの人と一緒にいるんだ"って思ったんだよ

私がそう言うと精市くんは大きく目を見開いた後、ふわりと笑って私の背中に腕を回した。触れ合っている胸同士から、とくんとくんと心地よい鼓動が伝わってくる。


「名前」
「ん?」
「これから先たくさん迷惑かけると思うけど、飽きずにずっと一緒いてくれ」
「その言葉、そのまま精市くんに返してあげる」


すると精市くんは、もっと強くぎゅうと抱きしめた。私も背中に腕を回す。その時にほっぺたに軽くキスをすれば、「…不意打ちは酷いよ」そう言って唇に暖かい温もりが落ちてきた。

20120606