耳より上で二つに結ばれた癖の強い髪の毛が、歩く度にふわふわと揺れる。それと同時に髪を結んでいる白のレースのリボンもふわふわと優しく揺れる。
何故か急にそれに触れたくなって手を伸ばせば、くるり、急にこちらを振り向き、伸ばした手は宙に浮かんだままになった。

階段の踊り場に備え付けてある大きな窓から夕日が入り込み、彼女の姿を赤く照らす。
「ユウジ、そこでストップ」そう言うと、一段二段と階段を上って行き、俺と同じ目線の高さになったところで足を止めた。

普段、彼女の方が小さいから俺が見上げるなんて変な感じだ。すると彼女は優しく微笑むと俺のバンダナに手を伸ばし、ゆっくりと取る。
そして俺の前髪を細い指で持ち上げたかと思えば、少し前屈みになる。赤い視界が徐々に暗くなっていき、額に落ちた暖かく柔らかい優しいモノ。


「えへへ。いつものユウジの真似っこ」
「……アホ」
「ユウジの為ならアホにだってなったる」


逆光のせいで表情はよく見えない。
けれど、その姿だけははっきりとしていて、高い位置で結ばれたリボンが、まるで羽のようにふわりと浮かんでいるように見えた。


天使だったら良かったのに

20120316
企画「あの子は似合う」様に提出