ごろごろと喉を鳴らしているかのように、私にぺったりとくっつく謙也のふわふわの髪の毛に触れれば、今以上にぴったりとくっついてきた。それが可愛くて、ぷにぷにのほっぺたにちゅうをしてみれば、謙也はへらりと笑って私の頬にリップノイズ付きのキスを落とす。

謙也のあまりの可愛さに頭がぐらりと回った。あぁ、神様。あなたはどうしてこんなに可愛い生き物を作ってしまったのでしょう。存在するだけで、こんなにも愛しく感じる生物なんて謙也以外存在しない。うっとりとした目で見ていると、それ以上に熱い視線で私を見てくるから、さらに胸がきゅんと高鳴る。


「何で謙也はそんなに格好いいの?」
「名前に褒めてもらうため」
「何で謙也はそんなに可愛いの?」
「名前に愛でてもらうため」
「何で謙也はそんなに、」


そこで私の言葉が謙也の唇によって奪われた。熱い唇が触れては離れを繰り返し、何度も何度も謙也を感じる。普段は可愛いくせに、こんな時だけ男っぽいなんて卑怯だ。だから私はさらに謙也にはまっていき、抜けれなくなってしまうのだ。

蜂蜜色の髪の毛に指を通し、くしゃくしゃにしながら更に自分の元へと引きつける。すると謙也は素直に私の元へと近づき、胸と胸の間に隙間は無い。謙也が呼吸する度に私に伝わって来る。私の呼吸も謙也に伝わっているはずだ。そして、この、鼓動も。

ちゅ、と名残惜しい音を奏でながら私たちの唇は離れた。謙也のほっぺたは桃色に染まっていてとても可愛い。こんな姿を見てもいいのは私だけ。家族も、クラスメイトも、ファンの子も。絶対に見せてあげないのだ。


「名前、好きや」
「うん」
「世界一好きや」
「うん」
「宇宙一愛しとる」
「謙也…!」


謙也から零れた言葉に涙が滲む。彼にこんなにも愛されている私は宇宙一の幸せ者だ。格好いい謙也も、可愛い謙也も、泣き虫の謙也も、怒りんぼの謙也も、全部全部私のもの。そして私も全部全部謙也のもの。


「学校卒業したら結婚しような」
「うん」
「子作り頑張ろうな」
「もー、謙也ったらぁ!」


真面目な顔して言う謙也の肩をぺちんと叩けば、「こいつぅ〜」なんて言いながら私の髪の毛をくしゃくしゃにしてきた。せっかく謙也に可愛いって言ってもらうために、毎朝一時間かけてセットしているのに、それを謙也は一瞬で崩してしまう。本当なら怒鳴りたいところだけど、謙也だから許してあげるのだ。


「今週末、部活ないねん」
「じゃあ、泊まり行ってもいい?」
「おん。その代わり寝かしてあげんからな」


いつもより低い声で囁いた言葉に体が火照る。あぁ、やっぱり謙也は格好いい。こんなに素敵な人がこの世に存在するなんて、神様は本当に悪戯好きなのだ。


「すんませんけど、そういうの他でやってもらえませんか?」


たこさんウインナーを頬張りながら、私たちを汚いもののように見る財前くんの視線が突き刺さる。その後ろで白石くんが金太郎くんの目を掌で隠していた。


「今日の授業延びすぎやろー!」


がちゃりと鈍い音を立ててドアが開き、そこから小春ちゃんとユウジくんが顔を出した。その手にはお弁当。せっかくの楽しい休憩時間が騒がしい人たちによって中断されてしまった。

20130424