今日は風が強かった。けれどスカートの下に見せパンを履くのは苦手だし、ストッキングの締め付け感も嫌いだ。だからと言って、今までそれで過ごしてきて何か起きた訳でもないから、今日もいつも通りに登校した。 家から学校が近いから、横着して人より家を出るのが遅い。だから必然的に私は他の人より学校に到着するのが遅くて、私が学校に着く時間帯は朝練が終わり、慌てて自分の教室へと向かう人ばかりなのだ。 iphoneで音楽を聴きながら優雅に登校。今の時間帯は先生たちも職員室に篭っているから何をしたって大丈夫なのだ。今日は天気も良いから自然と足取りも軽くなり、スキップもしてみたりする。 「おい!」 「ぎゃあ!」 突然イヤホンが外れたかと思えば、耳元で聞こえたドデカイ声。びっくりして慌てて振り返れば、お腹を抱えて笑っている一氏がいた。テニス部の朝練の終わりの時間と被ったようで、レギュラーメンバーが勢ぞろいだった。 「自分、もっと可愛い声、出せ、や!」 「おい。いつまで笑っとんねん」 「ぎゃあやて!ぎゃあ!」 そんなにウケるところでもないだろうに、一氏は変わらずお腹を抱えて笑っていた。股間目掛けて思いっきり蹴ってやろうと思ったけど、今は目の前に白石王子がいるから、ぐっと堪える。 その時、木の葉がサワサワと揺れたかと思えば、ぶわりと強い風が通った。せっかく時間をかけてセットした髪の毛が崩れてしまう。必死に押さえていると、股の間がスースーする。目線を落とせば、スカートが風を含み、綺麗に膨らんでいた。 静かに風がやむと同時に、この場に沈黙が落ちた。目の前の一氏は目を真ん丸にしていたかと思えば、一気に耳まで赤くなる。それを見た私は、全てを悟り自分までも赤くなっていく。 「大丈夫!安心しろ!俺はなんも見てないですよ!」 「…」 「まさか、苗字があんなエロいパンツ履いとるとは、!」 周りのレギュラーメンバーは顔を伏せて沈黙を貫いていたのに、一氏は両手をぶんぶんと動かしながら口早に喋る。私は全身が震えるのが分かった。 「アホー!馬鹿ー!死ねー!」 何か言おうと思ったら、まるで子供のケンカで飛び出すような単語が口から零れた。そしてわなわな震える右手の拳を真っ直ぐ前に出せば、一氏のお腹にヒット。すると一氏は鈍い声を出して、お腹を抱えた。 「もう嫁に行かれへん!おかあさーん!」 両手で顔を隠しながら、その場全員に背中を向け一目散に下駄箱へと向かって走る。その時、小さな石ころにローファーが引っ掛かり思いっきり転ぶ。それと同時にスカートが捲れあがる。 キッと後ろを振り返り呆然と立ち尽くしたままの一氏を睨む。「全部自分のせやぞ!ボケェ!」ぐわっと叫んで、私は膝に砂をつけたままその場を後にした。 20130427 |