(現代/大人設定)



からん、と硝子コップの中で揺れた氷が音を立てた。相変わらず政宗はロマンチックで、バレンタインだからと言って、都内の景色が一望出来る高級ホテルの最上階を取ってくれていたのだ。

朝は政宗の家で過ごし、お昼はショッピング、夜は夜景を見に行った後、ホテルにチェックイン。私は先にお風呂に入り、今は窓辺のソファーに座りながら、政宗のお気に入りのワインを片手に夜景を楽しんでいる。

政宗と出会ったのは高校生の時。あの頃から、気障だとは思っていたけれど、大人になっても変わらない性格に自然と笑みが零れる。すると風呂場のドアが開く音が聞こえた。そろそろ政宗が上がってくるのだろう。


「Hey,my sweet honey.気分はどうだい?」
「最高よ。生きている内にこのホテルに来れるだなんて思ってなかったから、正直驚きもあるけどね」
「名前が喜んでくれるなら、俺はなんだってするさ」


まだ乾ききっていない髪の毛が頬に触れて、少し気持ち悪い。けれど、完璧主義者の政宗のこんな無防備な姿を見れるのは私だけ。普段、眼帯によって隠された右目も今は開放されている。私はなんて幸せ者なんだろうと、改めて感じた。


「名前、少し酔ってるだろ」
「…あまり、お酒は強くない方だから」
「体がHotで気持ちいいけどな」


このままセックスしたら、さらに気持ちよくなるぜ。なんて政宗が言うから、私はぺしんと頭を叩くと「Jokeだよ、Joke」と言った。本気だった癖に、そう私が思っていたのがバレてしまったのか、政宗の掌がバスローブに包まれた私の胸に優しく触れた。


「今は景色を眼に焼き付けたいの。後でね」
「…Ok」


不貞腐れたように言い、私とは別の空いたソファーにどしりと座った。薄いのに筋肉のついた体、端正な顔立ちにこの風景が似合いすぎていて、くらり、と眩暈がした。


「どうした?眠たいか?」
「ん…ちょっとだけ。だいぶ酔いが回ってきたみたい」


私がそう言うと、政宗はなんだか嬉しそうになって笑ったかと思うと、私の傍に来たかと思えば、そのまま私を抱き上げた。所謂、お姫様抱っこというもので、自然と政宗との顔の距離が近くなる。あぁ、また酔いが回ったみたいだ。

そのままふわふわのベッドに下ろされたかと思うと、私の隣に政宗も寝転がった。そして大きな掌で、私の頭を撫でてくれる。その優しい手つきに、瞼がどんどん重くなっていくのが分かった。


「眠いんだろ?我慢するな。もう寝ろ」
「…でも、」
「ここならまた連れて来てやるから」


政宗はそう言って、私の額に唇を落とした。それが嬉しくて、政宗の頬に触れると「なんだ?誘ってるのか?」なんて言うから、私は微笑む。


「うん…。このままセックスしたら、気持ちいいんでしょう?」
「…全く。お前は最高なHoneyだぜ」


すると政宗の手が、私のバスローブに触れ、ゆっくりと肌蹴させていく。それだけの事なのに、異様に色っぽく、さらに酔いが回った気がした。