お前、明日暇やろ
ユウジのその言葉に読んでいた雑誌をくるっと丸め、ベッドに横たわってテニス雑誌を読んでいるユウジの頭に向かって振り落とす。
ぼこん!といい音がしたかと思えば、ガバッと上体を上げ「何すんねん!ドアホ!」と叫ばれた。


「彼女に向かってめっちゃ失礼な事言うたなぁ」
「俺は正解しか言うてへん!」
「ふっ…残念やけど明日はユウジ嫌いなあの子と一日ラブラブデートやねん」
「は!?あいつと!?嘘やん!」


ユウジはそう言うと、まるで世界の終わりだという位の表情をしたかと思えば、私の肩をガシリと掴み「ドタキャンしろ」と言ってきた。アホか。


「何?明日なんかあるん?」
「なんもないからドタキャンしろ」
「なんもないんやったらドタキャンする必要ないやん」
「ええから!な!」


すると肩を掴んでいる手の力が強まり、今度はぐらぐらと体を揺らしてきた。
さすがに途中から気持ち悪くなってきたから、手を伸ばしユウジの頬に触れる。するとピタリと動きが止まった。


「明日何があるん?」
「…練習試合、見に来て欲しい、です」


ユウジはそう言うと頭を垂らした。
私はユウジの横、ベッドの上に座り自分より上にあるピンピンと跳ねた髪の毛をくしゃくしゃしてやる。
するとゆっくりと顔が上がり、潤んだ瞳が私を映し出した。


「大好きな彼女が応援しに行くんやから絶対勝たなあかんで?」
「格好ええとこ見せて惚れ直させたるわ」
「期待しとる」


そう言って二人で悪戯っ子のように笑い合った。

20120217