決戦の火蓋は落とされた
なんて言ったらおどろおどろしくなるけれど、まさに今の私にとってこれ以上に当て嵌まる言葉は存在しない。
体育は無事に終了。さっさと制服に着替えて(ワンピースって楽やわ)(だっさいけど)上にいつものカーディガンを羽織る。
と、いつもならこれで終わりだけれど今回は違う。その上からユウジのジャージを着る。
戦闘準備万端だ。


「ちょっと行ってくる」
「はいはい」


相変わらず軽くあしらわれながら私は教室を飛び出し、ユウジの教室へと向かう。(遠すぎやろ!)
開けられたドアから顔を覗かせてみれば、ユウジが教室でわーわー騒いでいて、その横に乙女より乙女な小春ちゃんがいた。(回りに花が見える)


「あの、ユウジ呼んで来てくれへん?」
「自分、一氏の彼女?」
「うん」


ドア付近にいた男子にユウジを呼んで来てくれるように頼めば、上から下までジッと見られ「初めて見たけどめっちゃ可愛い子やなぁ」と言われた。
どや、外面だけは財前くんもビックリするぐらいに天使やねん。


「一氏ー!可愛い彼女来とるで!」
「名前!?こんな遠いとこまで何しに来たん!?」
「ジャージ返しに来てん」


四天宝寺はマンモス校だから例えユウジが有名だとしても、私を見た事がない人は少なくない。
好奇の視線が突き刺さるのを感じながら、私の元へと慌てて駆け寄ってきたユウジを見つめる。


「これ、ありがと」
「ええけど、」
「あんな、ユウジにお願いあんねんけど、」
「ん、なに?」
「カーディガンだけやと寒いからこれ、借りたいんやけどええ?」


ズボンを手渡した後、私は着ているジャージの袖から少しだけ指を出し、身長差が大きいのを利用して上目遣いをする。そして体育の授業中に考えた台詞を吐いた。
そうしたら、ユウジの動きがピキリと固まったかと思えば、着ていたジャージが剥ぎ取られてしまった。
あれ?作戦失敗?


「ジャージより制服のがぬくいから、こっち貸したるわ」
「でも、そしたらユウジが寒いやろ?」
「俺は名前と違って鍛えとんねん!体の作りが全然ちゃうんやから平気や!」


自分が着ていた学ランの上着を私にかけながらそう言ったユウジの顔はほんのり赤く染まっている。
ありがとう、そう言えばユウジは「俺はお前の彼氏やからな」なんて言ってニカリと笑った。

20120217