ユウジは男子にしたら大きい方ではないけれど(本人曰く、まだ成長中らしい)私は女子にしたら小さい方で、私とユウジは軽く10cm以上の身長差がある。
そして男女の体格差。細いけれどガッシリとした男の体のユウジと、自分で言うのは悔しいけれど凹凸の少ないひょろい体の私。
ユウジに体操服を借りたはいいけれど上着もズボンもぶかぶかでだらしない。
それでも体操服を着ているということが大事だから脱ぐことも出来ず、そのまま体育館へと向かう。


「彼ジャーとかありえん」
「しゃーないやん。いつも借りとる子が持ってなかったし」
「違うクラス行けばよかったやん」
「めんどい」


友人は相変わらずユウジ関連の話題になるとシャーシャー牙を向けてくる。
怖いわぁ、なんて言いながら余った袖をぺらぺらと揺らす。以前、ジャージが小さいと愚痴っていたユウジを思い出す。
これが小さいとか、やっぱ男の子なんだと改めて感じる。


「ぶかぶかの着とる奴がおると思ったら苗字か」
「おん。ジャージ忘れたからユウジに借りてん」
「でもぶかぶか過ぎへん?そんなんで走れんやろ」
「走らんもん」
「走れや!」


話しかけて来たのは謙也くんだった。
相変わらずのスピードマニアだから冗談で言った言葉に本気で返されたけれど、気にせず会話を続ける。
私の横で友人がイライラしながら靴の踵をカンカン鳴らしているのが凄く気になる。(この子の男嫌いもどうにかしてやりたい)


「でもやっぱそれええな」
「どれ?」
「指が袖からちょこんと出とるの」


謙也くんはそう言うと私の手を指差した。
そう言えば男の人って、袖から少しだけ出る指がたまらん!みたいな人が多いとよく聞く。


「…ユウジもこれ好きなんかな」
「大抵の男は好きやと思うで」
「ほう…」


謙也くんの言葉に思わずニヤリとしてしまった顔は隠せず「顔怖いで!」と言われてしまったのは別の話だ。

20120217