2013年年賀企画


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ほら、もっとこっち来んと濡れるで

ユウジはそう言って、私の肩を自分の方へと引き寄せた。
丁度旋毛辺りにユウジの息がかかってくすぐったい。


「しかし、ほんま寒いなぁ」
「ほんまやね」
「なんぼ降れば気ぃ済むねん」


珍しく降り続ける雪に対してユウジが小言を言う。
見上げたユウジの鼻は赤く染まっていて、怒っているけれど怖さ半減だ。
手を伸ばして鼻を摘まんでみると、ユウジが目をぱちぱちさせながら私を見た。


「何しとるん?」
「なんでもなーい」
「なんでもないわけないやろ」
「なんでもないもんはなんでもないねん」


右手は傘を持ち、左手は私と手を繋いでいるから、私の指を外すことが出来ない。
少しだけムッとした表情になったユウジを見て、少しだけ悪戯心が芽生える。


「あ!」


繋いでいた手を離し、傘から飛び出す。
ゆっくりと降る雪がコートに触れ、白く染めていく。


「そんなことしたら風邪引くで!はよ帰ってきぃ!」
「風邪引かせたなかったら、私を捕まえてー!」


アホな事を言いながら、人も車もいない静かな道を全力疾走する。
するとアスファルトを蹴る音が響き、振り返れば傘を閉じたユウジが私の元へと走って来る。
それからは本当に一瞬で、私はすぐにユウジの腕の中に閉じ込められた。


「傘入っとるより、こっちの方がぬくいからええやろ」
「でも顔寒いからなぁ」


そう言って、ユウジの腕の中でくるりと回り目と目を合わせる。
猫みたいな瞳の中に私がくっきりと映っていた。


「なにそれ。チューして欲しいってこと?」
「さぁ。どうやと思う、ユウくん?」


ユウジの両頬に手を添えれば、いつも通りニカリと笑って私を見た。
好きなようにさせてもらうわ、ユウジはそう呟くと私の唇にそっと指で触れた。

20130102