「名前ちゃん好き好き好きー!」 「私もユウジのこと好きー」 「もっと言って!もっと!」 「好きー。ユウジは世界で一番格好いい。男前ー」 一体ユウジは何が楽しいのか、小春ちゃんに借りた本を読んでいる私を後ろから抱きしめ、ずっと一人で喋っている。 返事をしないと面倒臭いから適当に返しているだけなのに、ユウジは満足しているようだ。 本人がそれでいいのなら、私もそれで構わないのだけれど。 「なぁ、シャンプー変えた?」 「うん」 「やんなぁ!やっぱ俺、名前のことは何でも分かるわ!」 それはそれできしょいやろ、と思うけれど今はスルーだ。 ここでまた私が下手な事を言えば、せっかくの楽しい読書の時間が奪われてしまうのだ。 「…あぁ、俺、名前の髪の毛になりたい」 「…」 「そしたらずっと一緒におれるのに!」 いや、髪の毛の寿命は意外と短いぞ ポロリと口から出そうになったのをぐっと我慢。 これぐらいでツッコミを入れたら負けだと、ユウジと付き合ってから勉強したのだ。 「俺、こないだ風呂で想像しとったんやけど、俺が名前の弟やったらとことん甘えるねん」 「へぇ」 「んで、毎日風呂では体洗い合いっこして、寝る時は名前に抱きついて寝る」 「へぇ」 「でもよく考えたら兄弟同士の恋愛はあかんから、弟の俺は夜な夜な名前の事を思いながらオナニーしとるんやで」 さっき寝る時は毎日私に抱きついて寝るとか言っとったのに、オナニーするんかい。 しかも私に抱きつきながらするとか最悪やん。 「想いが日に日に大きくなって、俺はとうとう我慢出来んくなって…!」 「なぁ、ユウジ」 別世界に行ってしまっているユウジには悪いと思うが、私は栞を閉じてから本をテーブルに置く。 するとユウジはまるで犬のように頬を擦りつけながら「ん?」と言った。 「さっきからお尻に固いもんあたっとるのがめっちゃ気になるんやけど」 「想像しとったら成長した」 「あーあ、ユウジの股間が爆発したらええのに」 「とっ、突然怖いこと言うなや!やめて!」 20130314 |