「なぁ、プリクラ撮ろう!プリクラ!」
「えー、やだ」
「ええやんかぁ!俺ら付き合ってから一回もプリクラ撮った事ないやん!な?」


今日は珍しく部活が早く終わったから、その後ユウジと街へ繰り出した。
放課後は基本的に友人と過ごしてるからか、ユウジと一緒にいるというのが不思議な感じだ。
私の手をぎゅうと強く握って離してくれない。

だらだらしながらいろんな雑貨を見たり、テニス関連の物を見に行ったり。
そんなくだらない事が楽しくて仕方ないのは秘密だ。
そんな中、ユウジが私を引っ張って連れて来たのはゲームセンター。
普段あまり来ない場所だからどうしたのかと思えば、プリクラを撮りたいと喚き始めた。


「一生のお願い!な!」
「それ、こないだも言うてた」
「じゃあ今月のお願い!」
「…」
「金、俺が出すから!」
「…ならええよ」
「ぅおっしゃー!」


言っておくけれど、私は別にプリクラが嫌いな訳ではない。
友人たちとは普通に撮るし、プリクラ帳を作ってる至って普通の女子高生だ。
けれど、自分の彼氏と撮るというのは、なんだか、こう、恥ずかしいものがあるのだ。

ユウジに引きずられるように新機種の台へと入れば、ギラギラのライトが目に刺さる。
そんな中、ユウジは軽快に鼻歌を歌いながら、ちゃりんちゃりんとお金を入れていった。


「な、どれがええん?」
「んー、これ」
「背景ハートがええ!」
「ユウジの好きなんにしてええよ」
「ほんまに!?」


映し出された画面を不慣れな手付きで押していくユウジを、後ろから抱きしめる。
すると凄い勢いで振り返って来たから「時間なくなるで」と言えば、口を尖らせながら視線を画面に戻した。
やっぱりユウジはからかうと面白い。


「さー、撮るで!」
「なんでそんなに気合いれるねん」
「大切なことや!」


そう言って私の肩に腕を回し、お互いの体が密着する。
女性の陽気な声でカウントダウンが始まり、ぱしゃりとシャッター音が響いた。

適当にいろんなポーズをして、最後の撮影になった時だ。
急に腰に腕が回って、ユウジの方へと勢い良く引かれたかと思えば今度はユウジの手が私の頭を包んだ。

ぱしゃり、シャッター音が聞こえた。


「念願のちゅープリや…!」
「…あほ」
「名前ちゃん顔真っ赤っか。かぁわいぃ〜!」


少し体を屈まらせて、熱い頬をツンツンと指で突いてくる。
そんな私を知ってか知らずか、ユウジはちゅープリを携帯の待ちうけにするとか言いながら落書きコーナーの方へ先に行ってしまった。


「ちゅープリ撮ったら別れるってジンクス知らんのか」


きっとペンを片手にルンルン気分のユウジには私の気持ちは分からないだろう。
そうだとしても、ユウジが満足気だからいいのだろうか。
恥ずかしいような哀しいような、なんとも言えな気分になりながら、私も鞄を持ちユウジの元へと向かった。

20130222