私の太ももを撫でるようにすべる感触が酷く気持ち悪い。
今すぐにでも引っぱたいてやりたいけれど、帰宅ラッシュの電車は混みすぎてて腕一本さえ動かせない。
それをいい事に私に密着して、痴漢紛いのことをする自分の彼氏が恨めしい。


「なぁ、密着しとるとムラムラせん?」
「せんわボケ」
「そんなこたないやろ」
「その自信はどこから来んねん」


耳元に顔を寄せて喋るから耳に吐息がかかってくすぐったい。
それから逃れようと身を捩れば、ユウジは何か誤解したようで「正直になった方がええんとちがう?」と言い喉で笑った。

その時、ユウジの骨ばった手がスカートの中に入っていったのが分かった。
びっくりして体が跳ねると、隣にいるスーツを着ている男の人にぶつかってしまい、すみません、と小さく謝る。


「なぁ、やめてって」
「俺、名前不足で死にそうやねん」
「やからって、」


そう言い合う間にもユウジの手が私のお尻を鷲掴みした。
ストッキングと下着越しだけれどその感触はリアルに感じ、ぞわりと体が震えてしまう。


「なんやかんや言うて、感じとるやん」
「っ、それは!」
「静かにせんと他の人に聞こえてまうで」


ユウジはそう言いながら、手をお尻から前の方へと移動してくる。
そしてゆっくりとソコを撫で始めた。


「ほんまやめてって」
「やだ」


二人きりならまだしも、こんな場所でこんなことをするなんてただの変態だ。
しかもこんなにやめてと頼んでいるのにやめてくれない。

沸々と静かに怒りが込み上げてくる。


「い゛っ!」
「やめろって言うたやろ。このドアホが」


自分の真後ろにあったユウジの足を思いっきり踏みつければ、ユウジの手は私から離れていった。
後ろを振り返りユウジを見上げれば、「・・・すまん」と涙目で静かに痛みに悶え苦しんでいたから、「いらんことする自分が悪いんやで」と笑顔で言っておいた。

20121029