良く晴れた日曜日。四天宝寺のテニス部は立派な設備が整えられたテニスコートで練習試合をしている。
ただの高校生の練習試合だというのに、相変わらずギャラリーの女の子で溢れていた。
世間一般から見れば私だってその一人であるけれど、本当は違うのだと思うと少し優越感に浸る。

空いている観客用のベンチに座り、まだ始まってもいないのに女の子の歓声が響くコートを見る。
鮮やかな色をしたジャージを着て、念入りに準備体操をしているユウジを見る。
普段、一緒にいる時には見せない表情が胸をときめかせた。


その時、財前くんと目が合った。嫌なもん見てしまったみたいな表情で私を見てくるから、イーッと歯を剥きだしてみれば、すぐに目を反らされた。
冷たい男やなぁ、なんて思っていたら今度はユウジと目が合う。

(向こうの自販機の前)

ユウジは口だけを動かしそう言ったかと思うと、コートから姿を消した。
それを見てから、私もベンチから立つ。







「名前!会いたかった!めっちゃ会いたかった!」
「ちょっと!こんなところやと人に見られるで!」
「大丈夫大丈夫!あー、試合前に名前に会えてほんまに良かった」


ユウジはそう言うと、ぎゅうぎゅうと遠慮なしに強く抱きしめてくる。
顔が胸板に埋もれて苦しい。


「今日も勝つから、目逸らしたらあかんで」
「うん」
「ちゅーか、俺以外見たらあかんで」
「うーん」
「なんやねん、その返事」


そう言って私の頬を抓る。軽くだから痛くはないけれど、早く離して欲しくて手をぺちぺち叩く。
その時「うわ!変なアベック見つけてもうた!」という声が背中にぶつかった。
声的に謙也くんだろうけど、相変わらずユウジが抱きしめているから確認することが出来ない。


「名前との逢瀬を邪魔しに来たんか!」
「ちゃうちゃう。ジュース買いに来てん」


まぁ、それやったらええわ。とユウジの声が聞こえた。
すると「ええなぁ。俺も彼女欲しいわ」と謙也くんの何とも言えない音色の声が響く。


「謙也は無理やろ。ヘタレやし」
「ヘ、ヘタレちゃうわ!」
「謙也先輩はヘタレの代名詞っすわ」


謙也くんだけだと思っていたら、白石くんと財前くんの声も聞こえた。
視線だけを上に向けると、生クリームみたいな色をした髪の毛が風に揺れたのが見えた。


「おー。相変わらずユウジに愛されまくっとるなぁ」
「けど、愛が重い時の方が多いで」
「おい!白石!どさくさに紛れて名前に触んな!死なすど!」
「彼女ええなええなー!な、ちょっとだけでええから貸してや!」
「何言うてんねん!謙也死ね!」


頭の上でわーわー騒ぐ声が響く。
これから試合やのに元気やなぁ、思っとたら財前くんが小さくため息をついた。
なんやかんや言って、先輩たちに付き合ってる財前くんは本当にいい子だと思う。


「何笑っとるんですか」
「んふふふ」
「きしょ」
「財前!世界一可愛い俺の彼女にいちゃんもんつけとんねん!ちょっと表出ろ!」
「めんどいから遠慮しときます」


だるそうに言い放つけれど、その口調に毒は無い。
自然と顔がニヤけていたのか、「お前も何アホ面晒しとんじゃ!」と言われ、思いっきり頬を引っ張られた。
20121220

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