ユウジはいつも唐突だ。
今だってまだ私の部屋に入ったばかりだというのに、まるで私の唇を噛みちぎってしまうのではないかと錯覚するぐらいに激しいキスを繰り返している。
突然のことに驚き、全くと言って良いほど荷物の入っていないスクールバッグが小さな音を立て床に落ちた。

ただただ、無我夢中でキスをしているユウジは、私に呼吸をする時間を与えてくれない。
そのせいで私は苦しくて仕方なくて、互いの顔の間に手を入れ込み無理やりに引き離す。
離れていったユウジの顔には明らかに不機嫌そうな表情が貼りついていたけれど、私にはそれどころではない。


「っ、も、苦しいから」
「俺はぜんっぜん足りんけど」


そう言ってユウジは口を尖らすけれど、私はそれを無視してベッドに横たわった。
するとその上に被さるようにユウジがやって来た。
私の視界には夕日で橙色に染まった天井と、逆行で影のかかったユウジの顔でいっぱいになる。


「なぁ」
「ん?」
「こないだの試合で勝ったから褒美くれるんやろ?」


ユウジはそう言うとベッドに散らばった私の髪の毛を撫でた。
確かに私は"次の試合で勝ったらご褒美あげる"そう言った。
けれど、私の思い描く褒美とユウジの思い描いている褒美は少々食い違いがあるようだ。

それを説明しようと思っているのに、ユウジの暖かい唇が首に触れ、熱い舌が唇を滑るから、徐々に体が熱くなってくる。
こんな筈じゃなかったのに、と思った頃にはユウジの指が太ももを優しく撫で上げていた。


「ユウジっ、ちょっと待って、!」
「んー?」
「学校から帰って来たばっかやし、」
「俺は名前をそのまま感じたいねん」


そう言ったユウジの表情があまりに色っぽくて、私は否定する言葉が出てこなかった。
気付いた時には自然と目を瞑っていて、私は全身でユウジを受け入れるように深く深呼吸をした。
20120925

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -