「あれ?あれ、名前ちゃんちゃう?」
「うぉ!ほんまや!」


部活の真っ最中、小春が指差した方を見ればそこにはフェンス越しに名前が見えた。
絶対に部活は見に行かん!とか言うてるのに、俺に内緒でこっそり見に来るとか可愛すぎやろ!そう思いながら「名前ー!」と名前を呼んで手を振れば、俺の方を見てにっこり微笑んで手を振り返した。


「めっっっっちゃ可愛い!!」
「ほんまやねぇ」
「ちょっと名前んとこ行って来るわ!」


小春には悪いと思うけど、名前が来とるんやからほっとかれん。
そう思って名前の元へ向かえば「部活頑張っとるねぇ」と言って、俺を笑顔で迎えてくれるから、心臓が鷲掴みされたみたいにギューっとなった。


「な、どしたん?俺に会いに来たん?それやったら最初から来るって言うてくれたらよかったんに!」
「ちゃうちゃう」
「え?」
「なぁ、白石くんは?」
「え、白石?何で白石?何で?」


名前の口から出てきたのは「ユウジに会いに来たー」なんて可愛い言葉ちゃうくて、"白石"というどこぞの絶頂部長の名前やった。
すると名前は「担任から白石くんに言付けあんねん」と言った。


「何で俺ちゃうねん!」
「は?」
「担任から俺に言付けはないんか!」
「クラスちゃうのにあるわけないやん。何言うてんの」


名前はそう言うと小さい背を伸ばすように背伸びをしてコートを見渡し、「コートにおらんけど、どっか行っとるん?」と言い、上目使いで俺を見た。
さっきから白石白石白石白石って何やねん。ちゅーか、担任も担任でこんな男の無法地帯に可愛い可愛い名前を送るなっちゅー話や。何考えてんねん。
その時「お前らまたイチャイチャしとんのか」と声が聞こえたかと思えば、いつの間にか名前の後ろに白石がおった。


「あ、ええとこにおった」
「ん?俺に何か用?」
「先生から白石くんにこれ渡しといてって言われてん」


名前はそう言うとスクールバッグからノートを取り出し、それを白石に手渡した。
その時、ちょっとだけ白石と名前の指が触れた。
白石、1アウト。


「火曜日までに出してって言うてたで」
「おん、分かった。わざわざありがとな」
「気にせんでええよ」


背の高い白石に、背の低い名前。必然的に身長差が出来る。イコール名前は上目使いになる。
名前の大きな瞳に白石がくっきりと映り込んでいて、見ててめっちゃ苛々してくる。
白石、2アウト。


「それにしても、自分ほんまにちっこいなぁ」
「えー、白石くんが大きいからそう思うだけやって」
「俺、自分が周りの子より頭一個分小さいの知っとるで」


白石はそう言うと名前の頭に手を乗 せ、た!?


「白石、スリーアウトオオオオオオオ!」


俺はそう言い、俺と二人を隔てているフェンスを掴み、ガチャガチャと揺らす。
すると名前は目をまん丸にし、白石は腹を抱えてケラケラと笑い始めた。


「ほんっっま信じられへん!お前、なに人の彼女にべたべたべたべた触ってんねん!変なもんがうつったらどう責任取ってくれるん!」
「そんときは…一つしかないやん」
「おまっ、俺は絶対許さんぞ!ふざけんな!名前脱げ!今ここですぐに消毒したる!」
「何ぬかしとんねん!ドアホ!」


名前はそう言ったかと思えば、白石を見上げにっこりとほほ笑み、「じゃあ私、遊戯王の再放送見なあかんからもう帰るわ。部活頑張ってや、白石くん」と言った後、俺をギラリと睨みつけ、ベーッと舌を出した後、背中を向けて走って去って行った。


「あー、ユウジ。俺もちょっとやりすぎたかもしれん。ごめんな」
「…怒った名前もめっちゃかわええ」
「…さいですか」
20120831

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