「めっちゃ美味い!これ素人ちゃうで!プロや、プロ!」
「もう、何言うてんの」


俺は本心で言うてるのに、名前は照れ隠しか何かわからんけど、ぱくりと形の良いオムライスにスプーンを突き刺した。
それを見た俺もまたスプーンを突き刺す。すると、とろりと半熟の卵が流れた。


「名前も料理上手くなったよなぁ」
「そら練習したもん」
「最初は下手っぴやったのに」
「昔のことなんて思い出さんでええから、冷める前に食べて」
「はーい」


付き合いだした頃の名前は、びっくりするぐらいに料理が出来んくて、オムライスなんて卵は固いし、ご飯はぱさぱさしとるしで、正直最悪やった。
それが今、数年という年月が経ち解決した。

名前と出会ったのは中学の時。一年生の時同じクラスで、なんとなく気が合って仲良くなった。それが俺の中で恋愛に発展するのは時間がかからんくて、好きになってからはとにかく
猛アタックしまくった。その想いは高校に入ってから叶い、今はそれからまた数年の年月が経っている。もちろんたくさんケンカしたし、もう別れると言われたこともあった。
けど、俺が名前を手放したく無くて、ずっと手を握り続けている。


「あ、そういえば俺内定決まってん」
「ほんまに?よかったやん」


名前はそう言うと、オムライスみたいにふわっと笑った。
出会ってから何年も経っとるのに、何でこいつは何度も何度も俺をときめかすんやろ。
飽きが来ん恋愛が、名前に対する想いが俺の毎日を鮮やかにしてくれとる。
これが朝目が覚めて、夜眠るまで永遠に続けばええのに。


「なぁ」
「ん?」
「結婚しよか」


からん、と高い音を立てて名前の細い指に掴まれていたスプーンが床に落ちた。
俺の瞳に映る名前の表情はなんとたとえたらええんやろ。


「それ、ほんまに言うてるん?」
「こんなこと冗談で言うわけないやろ。返事ははいかイエスな」
「…選択肢ないから、はいって言っといてやるわ」
「ちゅうことにしといたるわ」


返ってきた返事はいつも通り気の強いものだったけれど、名前の瞳には涙が滲んどるのが見えて自然と顔がほころぶのが分かった。
この幸せが毎日来る日は近いみたいや。
20121220

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